九州大学は、冷暖房時に生じる風が脳活動に及ぼす影響を明らかにしたと発表した。

同研究は、九州大学基幹教育院の岡本剛准教授(現・大学院医学研究院准教授)と、KFTの二枝たかはる代表らの共同研究によるもので、同研究成果は、英国時間9月14日にNature Publishing Groupの総合科学誌である「Scientific Reports」にオンライン掲載された。

冷房実験と暖房実験の脳波(ガンマ波)の相対振幅(最初の実験セッションからの差を平均値±標準誤差で表示)。破線はエアコン使用時、実線は放射式冷暖房使用時。横軸は何回目の実験セッションかを表す。冷房暖房のどちらも、放射式冷暖房を使った無風状態の方が、ガンマ波の振幅が有意に小さい。

室内の熱的快適性に関するこれまでの研究は「人がその環境をどのように感じるか」についてアンケート等で調査したものがほとんどだったが、それらによって作られた熱的快適性の指標は全て欧米での調査が元になっており、地域や人種などの差を反映しているとは言えなかった。さらに、暑さ寒さを感じている脳がどのように反応しているかについては、これまで検討されてきていなかったという。

同研究グループは、風の有無で脳活動がどのように変化するかを明らかにするために、同じモデルルームを使い、冷暖房方式(風の出る一般的なエアコンと風の出ない放射式冷暖房)を切り替えて、脳波、心理時間、皮膚温度等がどのように異なるかを計測・解析した。

実験は、夏の冷房環境と冬の暖房環境のそれぞれで実施し、その結果、冷房暖房を問わず、風が無い方が脳波ガンマ波、ベータ波の振幅が低くなり、また、より早く時間の経過を感じる事がわかった。高いガンマ波は強い不安状態を反映しているという報告があることから、この結果は、冷暖房下において風が無い方が平穏な状態でいられることを示唆しているということだ。

同研究グループは今回の研究成果について、「冷暖房の『風』が苦手な人は、脳が嫌がっているかもしれない、ということに繋がる成果です。快適で健康的な住環境の実現に少しでも貢献できれば」と語っている。