NEDOとアクトリーは、集光した太陽エネルギーの65%を電気と熱に変換できる世界初の追尾集光型太陽エネルギー回収システムの開発に成功したと発表した。

実証試験を開始する追尾集光型太陽エネルギー回収システム

同システムは、太陽光による発電と60℃以上の高温水を用いた太陽熱の熱回収を同時に行う架台設置型のハイブリッドシステム。これまで、ソーラーパネルによる発電システムや、集熱器等により太陽熱を40℃程度の温水として熱回収するシステムはそれぞれ存在していたが、同システムは、太陽光による発電と60℃以上の高温水を用いた太陽熱の熱回収を同時に行う架台設置型ハイブリッドシステムとなる。

NEDOとアクトリーは、2016年度より、石川県工業試験場、東京大学先端科学技術研究センターと共同研究体制で、高効率発電モジュールと光学シミュレーションによる独自の集光技術を開発し、これらを組み合わせた新しい太陽エネルギー回収システムの開発を行ってきた。同システムは、GPSを搭載したパラボラ型の反射鏡が1列に4個並んで6列で1ユニットを構成し、1列ごとに太陽の方向に向きを変えるため、高い集光率を得ることができる。さらに、集光した太陽エネルギー量のうち、25%を電気として、40%を熱(高温水)として回収するため、太陽エネルギー変換効率はあわせて約65%に上るという特徴がある。

今回、アクトリー本社敷地内に8ユニット(約13kW規模)が設置され、新システムの性能や実用性(耐久性・耐候性)、遠隔制御によるシステム保守運用の有効性の確認を行うことを目的に、2017年9月より本格的に実証試験が開始される。また今後は、同様のシステムを栃木県のアクトリーR&Dセンターと、宮城県のイチゴ農園施設に設置して、気候の違いによる性能効果についても比較し、これらの一連の実証試験の結果をもとに、「iU-SOALA(インテリジェンスユニット ソアラ)」として商品設計を行い、2018年度の事業化を目指すという。また、1ユニットの設置面積は約15m2とコンパクトであり、電気と温水を利用する農業ハウス、養殖施設、福祉施設、コンテナ式データセンターなどへの用途への利用を見込んでおり、さらに、遠隔制御によってシステム保守運用を行うため、山岳エリアや離島での需要も期待されるということだ。