世界の環境有識者アンケートを基に環境問題の危機感を時刻で示す「環境危機時計」が今年は、昨年より2分進んで世界平均時刻は9時33分になった、と旭硝子財団が8日発表した。2008年と並びこれまでで最も危機感が高い時刻となった。

図1 2017年の環境危機時計の世界平均時刻(旭硝子財団提供)

同財団によると、12時間で見る「環境危機時計」の今年の世界平均時刻は「極めて不安」な時間帯とされる「9時33分」になった。時刻は世界の研究者らに「何時か」というアンケートをした結果で決まった。アンケートでは、トランプ米大統領の登場を判断材料に挙げた回答者が全体の55%を占め、米国の回答では80%に達した。トランプ政権による地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」離脱が影響したとみられる。

このほかのアンケート結果によると、回答に当たり重視した分野は「気候変動」が29%で最も多く、次いで「生物多様性」が12%、「水資源」が11%と続いた。国・地域別に見ると、日本の回答では昨年より8分進んだが、世界全体よりは22分遅れる9時11分。地域別では東欧・旧ソ連、中東に続き、3番目に危機感が低かった。一方、最も危機感が高かったのは、オセアニアの10時13分で、次は北米の10時8分だった。

環境危機時計は、同財団が1992年から「地球環境問題と人類の存続に関するアンケート」結果を基に危機感を示す時刻を発表している。地球環境の深刻さを0時1分から12時までの時刻で示し、同財団は9時を過ぎると「極めて不安」な状態としている。世界各国の政府・自治体、非政府組織(NGO)、大学や研究機関、企業などの環境問題に関わる有識者に調査票を送付し、危機時刻を記入してもらう仕組み。今年は130カ国の研究者や企業、政府関係者2千人以上にアンケートしたという。

地球規模の危機感を概念的に表す時計としては、核戦争による地球破滅を「午前零時」とする米誌「ブレティン・オブ・ジ・アトミック・サイエンティスツ」の「終末時計」が世界的に有名。1947年から公表されている。

環境危機時刻の変化

図2 環境危機時刻の変化(旭硝子財団提供)

図3世界の地域別の環境危機時刻(旭硝子財団提供)

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