IDC Japanは9月12日、国内パブリッククラウドサービス市場予測を発表した。これによると、2017年の国内パブリッククラウドサービス市場規模は、前年比27.3%増の4,885億円、2021年の市場規模は1兆986億円になると予測している。
国内市場では、ITの導入時にクラウドと従来型ITを同等に評価/検討する「クラウドオルソー」戦略を取る企業が多い状況だが、最近ではクラウドを優先的に検討する「クラウドファースト」へのシフトが見られるようになっているという。
また、パブリッククラウドサービスのセキュリティについて懸念を抱く企業は多いものの、一方ではセキュリティの強化を期待してパブリッククラウドサービスを利用する企業が増加している。このような動向から、国内パブリッククラウドサービス市場は、高い成長を継続すると予測している。
国内市場では、デジタルトランスフォーメーション(DX)への関心が高まっている。そして、DXを具現化するために、オペレーションテクノロジー(OT:Operation Technology)の変革を支援する技術として「コグニティブ/AI(Artificial Intelligence)システム」「機械学習」「IoT(Internet of Things)プラットフォーム」「ブロックチェーン」などに対する注目が高まっていると指摘。
これらの新しい技術はクラウドを前提として開発されており、パブリッククラウドサービスとして提供されることが一般化しており、現時点ではこれらの新技術に関わる国内パブリッククラウドサービス市場規模は大きくないものの、今後の同市場の成長を促進する大きな要因になると想定している。
現在、国内市場では「データ流通(あるいはOpen API/Open Data)」に関わる議論が深まっており、すでにデータ流通を促進する法律(改正個人情報保護法、改正銀行法)の施行や「IoT推進コンソーシアム」「Fintech協会」などの業界団体からガイドラインなどの情報公開が進んでいるという。
データ流通の本格化は、APIエコノミーを具現化し、国内経済にも大きな影響を与えるようになり、APIの整備ではクラウドの活用が一般化しており、パブリッククラウドサービスに対する期待も高まっている。新技術によるOTの変革と並び「データ流通の本格化(APIエコノミー)」は企業のDXを加速し、国内パブリッククラウドサービス市場の成長を促進するとしている。
すでに、多くのパブリッククラウドサービスは、高度なセキュリティ機能を実装している一方で、ユーザー企業が適切にセキュリティ対策を実施しなければ、その効果は得られない。また、DXへの対応を含めてユーザー企業にとってセキュリティの強化は複雑となりやすいことに加え、どこまで実施すればよいか分かり難いという課題がある。
同社のITサービスのリサーチディレクターである松本聡氏は「国内パブリッククラウドサービス市場は、新たな成長期を迎えようとしている。その成長を牽引するのはDXであり、ユーザー企業がITサプライヤーに求める内容、価値も変化していく。ITサプライヤーは、ユーザー企業が変化するよりも早く自らを変革し、パートナーとしての立場を築くことが重要である」と分析している。