中国のファーウェイは、9月5日~9月7日、中国上海で同社の年次イベント「HUAWEI CONNECT 2017」を開催。最終日の9月7日の基調講演では、同社 法人向けICTソリューション事業グループ プレジデント 閻力大(エン・リダ)氏が同社のエコシステム戦略を語るとともに、DHLがロボットやAR、ブロックチェーンなど、最新技術を利用した取り組みを紹介した。
エン・リダ氏は講演の中で、パートナーとのWin-Winのエコシステムの重要性を強調し、顧客を含めた「鉄のトライアングル」がICTビジネスの成功のカギだと訴えた。
同氏は、同社が提唱する「鉄のトライアングル」を、次のように説明した。
「ファーウェイは多くの国で、さまざまな業界のトップレベルの企業と共同開発を行っている。それによって、多くの経験や教訓を積み重ねている。これらからわかったことは、デジタル化は鉄のトライアングルが重要だということだ。デジタル化の本質は、デジタル化の技術を使ってお客様の業務を作り直す、組織を生まれ変わらせることだ。業務を一番よく知っているのはお客様だ。そのため、お客様、とくにトップの積極的な参加が重要だ。また、デジタル化はICTが重要であり、ファーウェイのようなベンダーの参加は不可欠だ。さらに、業界における利用シナリオに従ったアプリを作る開発者が必要だ。これが、ファーウェイが提唱するデジタル化の枠組みだ」(エン・リダ氏)
初日の基調講演では、同社 取締役副会長 兼 輪番CEOの郭平(グォ・ピン)氏が、ファーウェイが注力するのは、ICTプラットフォームの部分であることを強調した。これを受けエン・リダ氏も、パートナーとのWin-Winのエコシステムを構築する同社の姿勢について次のように述べた。
「ファーウェイのエコシステムの特徴は、お客様の信頼できるパートナーになれることだ。ファーウェイは、技術やサービスでお金を生み出のであって、お客様のデータを使って現金化するのではない。これによって、お客様のベストパートナーにならなければならない。また、ファーウェイのエコシステムの特徴はプラットフォームを提供するという範囲を守ることだ」(エン・リダ氏)
そして、同氏はパートナー支援策として、オープンラボを現在の世界13拠点から20拠点増やすほか、10億元のファンドを立ち上げたことも紹介した。
DHLのデジタル変革
3日目の基調講演では、ドイツポストDHLグループ サプライチェーン COO & CIO マルクス・フォス(Markus Voss)氏が、物流の未来に向けた同社のデジタル変革を紹介。ロボット、AR、ドローン、ブロックチェーンなどの最新技術を利用した事例を紹介した。
マルクス・フォス氏がまず紹介したのは、電気自動車の利用だ。これは、大学と共同研究に実現されたもので、電気自動車を使って素早い配達をしようとしているのだという。また、小型の電気自動車をパートナーに販売して使ってもらうことを考えており、これによって、エネルギー効率が向上し、顧客が求めるグリーンな配送を実現できるとした。
ロボットの活用では、追従運搬ロボット「THOUZER」(サウザー)を紹介。サウザーは人が操作することなく、自動で人についていき、荷物の運搬を行うロボット。
同氏は、「サウザーは重労働を人の代わりに行うことができる。人についていき、運搬を行う。これによって、人は荷物を探すという作業に集中できる。サウザーは障害物があれば、止まり、応用性や効率も高い」と述べた。
AR(Augmented Reality)は、スマートグラスを利用して物の識別やスタッフを訓練する用途に利用。これを使うことで、従業員は荷物をどの位置に置いたらいいのかがすぐにわかるという。また、以前はトレーニングに数週間を要したが、これを使えば、従業員がすぐに働き始めることができるといい、トレーニングの量と時間を大幅に削減できるという。
ドローンでは、ライン川の対岸に届けるという用途で使っており、今後は都市でも利用できるようにしていくという。また、同社ではドローンを空からの倉庫点検にも利用している。
そして、ブロックチェーンは薬品のトラッキングに利用しようとしている。それは、薬品が、輸送中に製品がすり替わったりしてはならないとともに、期限を守る、保存状態を確認する必要もあり、さらに輸送中に誰が触ったのか、誰が関係したのかということをトレースする必要があるためだという。
マルクス・フォス氏はこのような変革を行う理由を、「物流業界は、すでに変革の波にさらさせている。1970年から2060年までの変化では、人口ピラミッド構造に変化をもたらし、増えた人口の2/3は40~80歳が占める。これにより、サービスの方法に変化をもたらす。これに対応していくためだ」と説明した。
また同社は、自動車部品に配送において、ファーウェイと共同で取り組んでいる。それは、トラックドックの空きを確認する部分だ。部品を配送する際、ドックの空きが確認できないと、部品を補充できず、部品が足りないと製造ラインが止まってしまうという問題が起きるためだ。そこで、NB-IoTを使って、トラックや荷下ろしドックにセンサーを付け、ドライバーのスマート端末に、どのドックが空いたのかの情報を配信。これによって、50%以上の待ち時間を削減できたという。
台湾のスタートアップ企業がAIを活用した行動分析を紹介
そのほか、基調講演では動線分析を手掛ける台湾のスタートアップ企業 SkyREC 共同創業者 兼 CMO 謝凱蒂(ケイト・シェ)氏が登壇。同社は、AIをビデオ分析に利用。実店舗での消費者の行動分析を行っており、講演では、イギリスの小売りMarks&Spencerのある店舗における分析事例を紹介した。
この店舗では、右から来た顧客の58%が右(上)に、25%がまっすぐに、17%が左(下)に行っていることが分かったという(下図)。
そして、下図の赤い場所がもっとも商品が触っている部分だという。ただ、そこの商品の売上はそれほど高くなかったという。
これについては、ケイト・シェ氏は、「みなさんは、人が滞在している時間が一番長い箇所が、一番売上が高いと思うでしょうが、そうではありません。この店舗尾では売上が一番低いエリアでした。この棚で売られているのはボディクリームで、その多くが男性でした。この男性たちは、恋人や奥さんについてきた男性で、退屈して、その部分に滞在していました。そのため、そこに男性向けの製品を置いて置くよう提案したところ、売上が2週間で15%向上できました」と説明した。
同社はファーウェイと提携関係を結んでいるが、その理由として同氏は、ビデオクラウドや製品が充実しており、それらを小売り業界に提案できる点や、ファーウェはグローバル展開しており、それらの顧客に自分たちのソリューションを提案できる点などを挙げた。