トヨタ自動車は9月11日、DCM(Data Communication Module;車載通信機)の標準設定を柱とする「コネクティッド戦略」の一環として、クラウドと車載機を融合したハイブリッド方式の「ナビゲーション機能」「音声認識機能」を開発したと発表した。これにより、顧客に新たな価値を提供する商品として、今秋以降、国内で発売される新型車のナビシステム(メーカーオプション)に順次展開していく。

今回、開発した新機能で「より早く到着するルートを探索、案内を受けることができる」「より多くのルートの選択肢から、ルートを選択できる」「より自由度の高い目的地検索ができる」「より簡単に、発話でマルチメディアシステムを操作できる」といった新たなサービスを提供することが可能になるという。

ナビ機能は、多くの車から収集した車両プローブ情報(走行した位置や車速などの情報を用いて生成された道路交通情報)と、外部情報を組み合わせたデータベースを用いて、ルート探索、および施設検索処理をクラウドで行い、車載機に配信すほか、通信圏外やリルートなど速い応答性が要求される場合には、自動的に車載機での処理に切り替えて対応する。

ハイブリッドナビ機能の概要

クラウドによるルート探索では、各道路に対する通過時間のヒストグラム(確率分布)を蓄積した所要時間データベースに加え、早く到着するルートと正確な到着予想時刻を案内するために、所要時間の平均値だけでなくばらつきも考慮してルート探索を行う。通過時間のばらつきを考慮し、平均通過所要時間の短さのみでなく、ばらつきが少ないルートを選ぶことで到着予想時刻の精度向上を可能にする。下図のルートAは平均時間は長いが、ばらつきが小さいルート、ルートBは平均時間は短いが、ばらつきが大きいルートとなる。

通過時間のばらつき考慮

また、区間が同一であっても、その進入方向や退出方向(直進・右左折)によって所要時間に差異が発生するため、区間当たりの所要時間に進入・退出を組み合わせた複数の時間データを考慮することで、ルートの所要時間を正確に算出することができ、「区間への進入リンク」「区間リンク」「区間からの退出リンク」の3リンクの組合せにより算出。下図の場合、「区間リンクd」の所要時間としては「進入リンクa、b、cの3種類」×「退出リンクe、f、gの3種類」の9種類となる。

区間に対する進入・退出の組合せ

さらに、クラウドで処理を行うことにより、ユーザーが車両を購入した後もルート種別を増やすことができる「拡張ルート」機能を実現。新しいルート種別はセンターからダウンロードすることで追加可能であり、その第1弾として、今後「関東ETC2.0料金割引優先ルート」を提供する予定だ。なお、施設検索においてはキーワードを用いた曖昧検索や複数の単語を組み合わせた複合検索にも対応している。

一方、ハイブリッド音声認識機能は、クラウドによる音声認識の自然な発話が認識できる、店舗名称などの多量な施設名称の認識ができるという利点、車載機による音声認識の応答性が速いという双方の利点を活かし、発話内容、状況に応じて、クラウドと車載機の機能を自動で使いわけることでマルチメディアシステムの快適な音声操作を可能としている。

従来のクラウドによる音声認識機能(エージェント「音声対話サービス」)は、自然な発話の認識ができるが、操作対象は目的地検索、天気、ニュースなどのサーバアプリケーションのみが対象になっていた。

加えて、車載機による音声認識機能は、認識可能なフレーズに制約があったため、住所で目的地を登録するには、「目的地」→「住所」→「東京都文京区後楽1丁目4」のように、数個のフレーズを覚えて使い、この二つの音声認識機能は別のシステムとなっており、使いたい機能に応じて、起動するシステムを使い分ける必要があったという。

従来の音声認識機能の特徴

今回開発したハイブリッド音声認識機能では、使いたい機能を意識することなく、音声認識システムを起動し「駐車場のある蕎麦屋を探す」「エアコンの風量を最大にする」などの自然な発話で各操作を可能としている。

ハイブリッド音声認識システムの概要