東北大学は9月5日、北半球の亜熱帯の海水温(深さ100~400m)が、最近100年間で約1度上昇していることを発見したと発表した。
同成果は、東北大学学際科学フロンティア研究所の杉本周作 助教らの研究グループによるもの。詳細は英国の学術誌「Nature Climate Change」に掲載された。
海洋は地球温暖化による熱の90%を吸収し、そのうちの約60~70%が700mよりも浅い海に蓄積するとされている。しかし、海洋内部の水温については1970年代以前の観測データが少ないため、その長期的な変化を記述することは困難であった。
今回の研究では、北半球の亜熱帯の海の広範囲に存在する水塊に着目し、1910年以降の海水温の変化を分析。その結果、北半球の亜熱帯の海水温は、最近100年間で約1度上昇していることを発見した。この上昇は、世界平均の海面水温の上昇速度の約2倍であり亜熱帯の海では非常に速いペースで温暖化が進行していることが判明した。
また、気候モデルのデータを分析した結果、亜熱帯の速いペースでの海水温上昇は、地球温暖化に伴う黒潮などの暖流の変化(強化・熱輸送量の増加)による可能性が高いことがわかった。海水温上昇は、海水の熱膨張による海面上昇を正確に見積もる上で重要になる。
さらに、海水温の上昇は、海中酸素濃度を低下させるので、魚の成長を阻害することになる。最近の研究では、地球温暖化がこのまま進むと、2050年頃には世界各地の海で魚の体の大きさが今よりも2割近く小型化するという予測結果が出ている。
研究グループは、こうした予測を同成果と照らし合わせた結果、亜熱帯ではすでに魚が小型化し始め、さらにはその小型化が予測よりも速いペースで進行する可能性があるとした。このことから、水産資源を守り、適切に管理するためには、変わりゆく海の兆候をとらえ、その変化に柔軟かつ迅速に対応することが大切だとしている。