日立製作所は9月5日、京都大学こころの未来研究センター広井教授らが、同大学の人文・社会科学系研究部門の社会構想と政策課題に関する知見を同社の人工知能(AI)技術と融合させ、持続可能な日本の未来にはどのような政策が必要かを提言すると発表した。
同大学は今後、大学内外の研究機関や公共機関と連携することで、人々が幸福かつ健康でいられる未来に向けて取り組むべき指針として、本提言を社会的な意思決定に活用することを目指す。
今回、同大学は、政策提言プロセスの一部に日立のAI技術を活用。具体的には、「人口や出生率」「財政や社会保障」「都市や地域」「環境や資源、などの持続可能性」「雇用の維持」「格差の解消」「人間の幸福」「健康の維持・増進」という観点から、149個の社会要因に関する因果関係モデルを構築し、AIを用いたシミュレーションにより2018年から2052年までの35年間で約2万通りの未来シナリオ予測を行い、23個の代表的なシナリオのグループに分類した。
2050年に向けた未来シナリオとしては、「都市集中型」と「地方分散型」のグループがあることが導出された。
これに基づき、「8~10年後までに都市集中型か地方分散型かを選択して必要な政策を実行すべきである」「持続可能な地方分散シナリオの実現には、約17~20年後まで継続的な政策実行が必要である」と提言している。
今回活用したAIの主な技術は、数値予測や意図予測といった「予測」領域に属する機能となる。具体的には政策提言の選択肢検討プロセスの中の、シナリオ列挙、構造解析、要因解析などが予測領域に相当し、政策に関する人間の価値判断や戦略選択を支援する。
「シナリオ解析技術」は、多様な未来シナリオを「抜け」「偏りなく」列挙することを特徴としており、「シナリオ分岐構造解析技術」は代表的シナリオに関して、未来から時刻を遡りながら乱数を加えてシミュレーションを繰り返し実行するバックキャスティング解析により、シナリオ間の分岐点、および分岐構造を特定する。
「感度解析技術」はシナリオ分岐の要因を明らかにし、分岐をコントロールするためにどの社会要因に注目すべきかを知ることで、望ましいシナリオに誘導するための具体的な政策を提言することを可能にする。