富士通研究所は、同社が2015年に開発した部屋全体をデジタル化するUI技術を拡張し、多拠点間の円滑な共創活動を実現する技術を開発したと発表した。
近年、スマート端末の普及やクラウド技術・通信技術の進展により、製造現場などにおける課題を遠隔地でも端末の画面上で共有できるようになってきたものの、テキストや画像データの共有に限定され、関係者が大人数で共有した画面を活用して議論することは困難であった。
多拠点間のデータ共有として、遠隔地間を映像で繋いでPC画面を共有する技術があるが、操作ができるのは1拠点のみになっているのが現状だ。また、クラウド上の文書を複数拠点から同時に編集する連携技術も存在するが、外部ネットワークの遅延の影響を受けやすい。
こうした背景から、データの編集操作や意見交換が繰り返される場において、多拠点間でも円滑にデータを操作できる技術や、複数拠点から同じデータを複数人で同時に操作する操作競合が発生した場合にも、作業の効率を低下させない技術の実現が課題であった。
同社は、画面操作やアプリケーションのデータを、クラウドではなく各拠点ローカルに持ち、必要なデータだけを同期する分散データ共有技術を開発。アプリ操作が同じ拠点内の端末にはそのまま共有されるため、リアルタイムに滑らかな操作や共有が行うことができる。また、他の拠点とのデータ共有では、各拠点までのネットワーク遅延状況に応じて、コンテンツを動かした際の軌跡など不要なデータを削除することにより、効率的な通信を可能にしたとのことだ。
同技術について実験を行った結果、多拠点間のデータ共有における遅延は技術適用前に比べ約9割短縮し、3拠点で最大2.1秒、6拠点で最大3.1秒で同期され、またローカルのデータ共有は拠点が増えても一定(0.3秒以下)であることを確認。このことから、拠点接続数にローカルのレスポンスが左右されず、同期時間もローカルのコラボレーションを妨げることがないため、同技術の実用性が確認できたという。
さらに、同社は、操作競合が発生する問題に対し、遠隔側の操作状況がわかるアウェアネス伝搬技術を開発。相手先が操作しているコンテンツをフラッシュ表示させたり、相手先の人の影を表示させるなどにより遠隔側の状況を知らせ、操作者に対し、相手先で操作中のコンテンツへの操作を自粛させる気づきを与え、操作競合を削減できる。この技術を用いて、2拠点で共同でデータを分類するタスクを行う実験を行った結果、これを適用しない場合と比較して50%の操作競合を抑制でき、作業効率を約26%改善できることを確認したという。
今後は、社内に技術を展開し、発想支援の有効性を検証する実証実験を進め、2018年度中の実用化を目指していく。同社は、これらの技術により複数の大画面を使ったコラボレーションを多拠点間で行うことで、ものづくりの現場のみならず、通常オフィスにおけるアイデア発想を集合することなく行うなどのワークスタイルの変化を期待するとコメントしている。