日立製作所は9月4日、自律航法などを用いて、GPSの電波が届かない屋内においても搬送車両や作業員の位置情報を計測・可視化し、データ分析を行う屋内外位置情報活用サービス「Tracking View」(トラッキング ビュー)の提供を開始すると発表した。
Tracking Viewは、日立産業制御ソリューションズと計測関連事業を手がけるサイトセンシングと共同で開発し、自律航法にビーコンと地図情報による位置補正を組み合わせ、屋内における搬送車両や作業員の位置情報を計測するシステム。
屋内において誤差約3.0m以内で位置情報を計測するとともに、従来の方法に比べて設置するビーコン数が少なく済むため、システム構築の期間や初期・維持管理コストを抑えることが可能なほか、屋外ではGPS信号を位置補正に利用することで、屋内外の位置情報をシームレスにつなぐことができるという。
具体的には、搬送車両や作業者に取り付けた加速度・角速度・地磁気の3つのセンサデータを、動線および加速、減速、速度、旋回などに変換する技術により、移動距離や方向などの挙動を演算する。
これに、ビーコンにより計測した絶対位置と、あらかじめシステムに登録した地図情報を組み合わせることで誤差を補正し、誤差約3.0m以内の位置情報を提供。ビーコンは、位置補正のための最小限の設置とするため、従来方式に比べて低コストなシステム構築を実現するとしている。
事業化の第1弾として、日立と日立キャピタルオートリースが協業し、フォークリフトのリース事業と組み合わせて10月から提供を開始する。
これは、日立キャピタルオートリースのユーザー(リース先)で運用されているフォークリフトに搭載したセンサから収集した稼働情報や屋内外の位置情報などのデータを、日立のクラウド型機器保守・設備管理サービス「Doctor Cloud」で分析して可視化するもの。
日立キャピタルオートリースは、その情報を基にフォークリフトの最適な配置や適正保有台数を算出するほか、資材の配置など現場レイアウトの最適化をユーザーに提案できるという。これらにより、フォークリフトの稼働率を高め、車両の燃料費や保守費、人件費などのコスト削減に貢献することに加え、車両のスピード超過・急加速・急減速・急旋回などの情報を安全運転指導や路面レイアウトの改善に活用することで、現場の安全性向上を図ることを可能としている。
同社は、車両管理の合理化や車両保全の充実、コストの適正化といった顧客ニーズに応えるため、フォークリフトのリースや車両の修理および点検サービスを加えたメンテナンス付リースを提供している。IoTなどのデジタル化が進展する状況下において、パートナーとの連携を強化することで、リースにとどまらず、車両に関連するサービスを組み合わせたビークルソリューションモデルの構築を目指す。
一方、日立は今後、Tracking Viewを水処理・交通などの社会インフラ事業者や流通分野などにおける作業者の動線管理の適用にも拡大していく方針とし、さまざまな分野におけるお客さまの経営課題解決に貢献していく考えだ。