金沢大学は8月31日、オキシトシンを小腸で吸収する仕組みを解明するとともに、その補給が、未熟児の社会性(社会脳)の発達に役立つ可能性があることを見いだしたと発表した。

同成果は、同大子どものこころの発達研究センターの東田陽博 特任教授、医薬保健研究域医学系血管分子生物学の原島愛 助教、棟居聖一 助教、山本靖彦教授らの研究グループによるもの。詳細は、英国科学誌「Scientific Reports」(オンライン版)に掲載された。

小腸絨毛の上皮細胞(青色部分)の周りに存在するRAGE(緑色部分) (出所:金沢大学Webサイト)

オキシトシンは、人が他人のこころを推し量り、交流していく際に必要なペプチドホルモンとされ、社会脳の発達に欠かせないものと考えられている。母乳中には、多くの栄養素とともに血液から濃縮されたオキシトシンが含まれており、母乳を飲むことで乳児にオキシトシンが伝わることが知られていた。しかし、腸管では体にとって良くないものを取り込まない機構(腸管障壁)が生後間もなく形成されるため、オキシトシンは腸管から自由に移行しないと考えられており腸管障壁の存在下で、オキシトシンがどのように腸管から体液に取り込まれるかは、これまで分かっていなかった。

今回、Receptor for Advanced Glycation Products (RAGE)という分子が小腸の絨毛上皮細胞にあり、それがオキシトシンを腸管側から体内側へ輸送し、オキシトシンを吸収することを明らかにした。

生後直後(腸管障壁形成前)において、オキシトシンは腸管上皮細胞を比較的自由に透過するが、腸管障壁形成後には、RAGEが小腸内のオキシトシンを輸送する役目を担う (出所:金沢大学Webサイト)

また、同研究グループは、RAGEがオキシトシンを輸送することから、オキシトシンを薬や栄養物として口腔投与(飲み薬)できることを示すほか、粉ミルクにオキシトシンを添加し摂取することでも、未熟児の発育の社会性低下および自閉スペクトラム症発症を低減できる可能性も示すと説明している。