大阪市立大学は8月28日、大阪市消防局の協力のもと、深部体温を予測する実証実験を行い、衣服内温度により深部体温を予測できることを確認したと発表した。
同成果は、大阪市立大学大学院工学研究科の髙橋秀也 教授、都市健康・スポーツ研究センターの岡崎和伸 准教授の研究チームによるもの。
消防服は発汗や皮膚温度の上昇による熱放散を抑制するため、着用時の熱中症対策が必要だ。深部体温が約39.5℃以上になると脳機能障害を引き起こし、重症化する可能性があるため、熱中症リスク判断には深部体温の上昇を察知することが有効だが、消防活動中の隊員の深部体温を測定することは困難であった。
今回の研究では、ウェアラブルコンピュータにより衣服内温度を測定できることに着目。先行研究によって判明していた、消防服を着用した一般人を対象に衣服内温度により深部体温が予測できるアルゴリズムを、火災現場を模した条件下においても同様に深部体温が予測できるかを検証するべく、消防隊員協力のもと実証実験を行った。
まず、事前調査として火災体験型訓練に参加し、情報収集と準備活動を実施。その際、20~50代までの隊員の消防服内温度を測定し、訓練中における熱ストレスが高い域に達する状態が発生することを確認した。続いて、人工気候室内で消防服着用の上、トレッドミル上での歩行をしてもらい、深部体温、皮膚温、衣服内温度などを測定した。その結果、深部体温の実測値と、衣服内温度より深部体温を予測するアルゴリズムを用いて求めた値が、極めて近いことが確認できたという。このことから、熱中症予知が可能だと実証されたと研究チームでは説明している。
なお、今回の成果について研究グループでは、消防服にウェアラブルコンピュータ機能を持たせることで、現場指揮者らは、消防活動を行う隊員の身体変化を把握して的確な部隊運用の指示が出せるようになるなど、消防隊員の安全性の向上が期待されるとコメントしている。