市場動向調査会社であるGartnerは、「先進テクノロジのハイプ・サイクル(Hype Cycle):2017年」を公開し、企業が今後5~10年にわたってデジタルエコノミーの世界で生き残り、成功することを可能にする、3つの大きなメガトレンドを示した。
ハイプ・サイクル(ハイプ曲線)は、Gartnerの造語で、特定の技術に関して、研究開発が始まった黎明期から生産安定期にいたる成熟度、採用度、社会への適用度を示す図である。公開されたレポートでは、2000を超えるテクノロジーを調査し、今後5~10年の間、高度な競争優位性をもたらすであろう一連のテクノロジーを選び出し、将来動向の分析が行われている。
今回のハイプ・サイクルでGartnerが指摘している3つのメガトレンドとは、「どこでも人工知能(AI)となる世界」、「透過的なイマーシブ・エクスペリエンス(没入型の体験)」、「デジタル・プラットフォーム」である。これらのトレンドは比類のないインテリジェンスを提供すると共に、まったく新しい体験を創出し、企業・組織が新たなビジネス・エコシステムとつながることを可能にする礎となると同社は見ている。
Gartnerの調査ディレクターであるMike J. Walker氏は、「テクノロジ・イノベーションに注力しているエンタプライズ・アーキテクトは、これらの重要トレンドと注目すべきテクノロジーのほか、それらが自社にどのような影響を及ぼすのかを評価する必要がある。これらのトレンドは、そうした影響をもたらすばかりでなく、エンタープライズ・アーキテクチャ・リーダーに重要な機会を提供している。すなわち、エンタープライズ・アーキテクチャ・リーダーは、ビジネス部門とIT部門のシニア・リーダーがすぐにでも承認可能なレベルの実用的かつ診断的な施策を打ち立て、彼らがデジタル・ビジネスの機会と脅威に対応するのをサポートできる」と同レポートの意義を説明している。
また、同氏は「今回のトレンドを概観すると、透過的なイマーシブ・エクスペリエンスを生み出す人間中心型の実現テクノロジー、例えばスマート・ワークスペースやコネクテッド・ホーム、AR、VR、成長著しいブレイン・コンピュータ・インタフェースといったものが、ハイプ・サイクルに沿ってほかのトレンドを牽引している様子が分かる」と述べているほか、ドライバ役となっている技術について、「どこでもAIとなる世界に関わる先進テクノロジーは、ハイプ・サイクル上を急速に進んでいる。ディープラーニング、自動運転車、機械学習、コグニティブ・コンピューティングといったテクノロジーは、ちょうど"過度な期待"のピーク期を越えつつある。このことは、これらのテクノロジーが透過的なイマーシブ・エクスペリエンスの創出を実現する主要なテクノロジであることを示している」と説明している。
さらに、3つ目のトレンドであるデジタル・プラットフォームもまたハイプ・サイクルを駆け足で上っているほか、量子コンピューティング(黎明期を上昇中)やブロックチェーン(ピーク期を越えた位置付け)などのテクノロジーは、今後5~10年において重要な意味を持つものとなる可能性を秘めているとしている。
なお、同氏は、「企業がテクノロジーをさらに活用し、社員やパートナー、顧客のエクスペリエンスに不可欠な要素にできれば、自社のエコシステムを新しい動的な方法でプラットフォームと、より強く結び付けられるようになることを、これらのメガトレンドは示している」とコメントしている。