Microsoft(MS)はHot Chips 29において、Xbox One XのSoCである「Scorpio Engine」の詳細を発表した。Scorpioを使用するXbox One Xゲーム機は2017年11月7日に発売されるとのことである。

Xbox One XのScorpio Engineを発表するMicrosoftのJohn Sell氏

Scorpio Engineは、TSMCの16FF+プロセスを使い、359mm2のチップに70億トランジスタを集積している。

なお、ScorpioはMicrosoftの開発であるが、実質はAMDが作ったチップであり、CPU、GPUともにAMDのパーツが使用されている。

Scorpio Engineは、TSMCの16FF+プロセスを使い、359mm2のチップに70億トランジスタを集積している (このレポートの図は、Hot Chips 29でのMicrosoftのSell氏の発表資料のコピーである)

次の図はダイプロットである。黄色い部分がGPUコアで、4個のスペアを含めて全体では44コア搭載されている。右側の濃い部分はキャッシュで、その隣は4個のCPUコアと思われる。

Scorpio Engineのダイプロット。黄色の部分がGPUコアで、スペアを含めて44個集積されている。右側に2MBのL2キャッシュと4つのCPUコアが2組ある

次の図はブロックダイアグラムで、左の2列目に大きなグラフィックコアがあり、右側には12個のGDDR5 DRAMとそのコントローラが書かれている。そして、上辺の中央付近にCPU 4コア+2MB L2キャッシュのブロックが2組書かれている。

Xbox OneやXbox One Sと大きく変わっているのがメモリ系で、Xbox Oneでは、メインメモリはDDR4メモリで容量を稼ぎ、メモリバンド幅が足りない分をオンチップの32MBのSRAMを搭載してカバーしていたが、今回のXbox One Xでは6.8GHzのGDDR5 DRAMを使っている。

CPUとGPUは並列にGDDR5メモリにつながっており、CPU-GPU共通メモリのシステムとなっている。

Scorpio Engineのブロックダイヤ。左から2列目の大きな黄色い箱がグラフィックコア、上辺の中央付近に8個のCPUコアがある。右側は12個のGDDR5 DRAMの部分である

GPUの32bit浮動小数点数の演算性能は6TFlopsとなっている。GPU部分は40個のコンピュートユニットを持ち、各コンピュートユニットが毎サイクル64積和演算を行えるので128Flop/cycle、そしてクロックが1.172GHzであるので、最大演算性能は6TFlopsということになる。

この性能は、ディスクリートGPUのハイエンド製品には及ばないが、ディスクリートGPUの中の上程度の性能であり、かなり高い性能を実現していると言える。

Scorpio EngineのGPU部分の仕様

CPUは、開発時期の関係でZenコアは間に合わず、その前の世代のJaguarコアを使っていると考えられる。8コアを集積し、コアクロックは2.3GHzで動作させている。クロックの向上に伴い30%程度性能が向上しているという。

メインメモリはGPUメモリと共用であり、12チャネルで192バンクという強力なメモリとなっている。

CPUコアの仕様。2.3GHzクロックのコアを8個集積している。メインメモリはGPUと共通で、GDDR5 DRAMをアクセスする

Xbox One Xでは、4Kのサポートと10bitのダイナミックレンジのサポートが新機能である。

ビデオ処理は4KのHEVCをサポートし、10bitの高いダイナミックレンジをサポートしている。また、ディスプレイ出力も64bitピクセルに対応している

今回のHot Chipsで特別だったのは、Hot Chips初日の8月21日に北米で日食が起こったことである。

Hot Chipsの開催地のシリコンバレーでは皆既日食にはならなかったが、7~8割欠けるというかなりの日食であった。

このため、MicrosoftのScorpioの発表の後、30分間の日食観測時間が設けられており、みんなが室外に出て日食を見た。もともとはHot Chipsの主催者が日食観測用の眼鏡を用意する予定であったが、税関で止められてしまい、明日にならないと届かないということで、眼鏡なしということになってしまった。

それでも自分で持ってきた人が10人に1人くらいの割合でおり、周りの人に貸して見せてあげたりしてみんなで日食を楽しんだ。出色は、双眼鏡の片方を使って、白い紙に大きく太陽の像を投影していた女性である。

双眼鏡の片側を使って、日食の太陽を紙に投影して観測した