九州大学(九大)は8月29日、液晶の薄膜中においてハーフスカーミオンと呼ばれる渦状の秩序構造が自発的に形成されることを、理論的および実験的に実証したと発表した。
同成果は、九州大学大学院理学研究院 福田順一教授、ウクライナ国立科学アカデミー、リュブリャナ大学、ヨーゼフシュテファン研究所らの研究グループによるもので、8月28日付の英国科学誌「Nature Physics」オンライン版に掲載された。
液晶は、さまざまな秩序構造を自発的に形成することが知られており、物理学の興味深い研究対象となっている。一方、スカーミオンはさまざまな系で現れることが知られているが、近年特に強磁性体において現れるものが注目されていた。
同研究グループは過去に、これまで議論されていた系とはまったく異なる液晶の薄膜においてハーフスカーミオンが現れうることを純粋な理論計算によって示していたが、今回の研究では、光学顕微鏡を用いて、数百nmの大きさのハーフスカーミオンが液晶中に実際に現れることを実験的に実証した。
さらに、シミュレーションで得られた液晶の秩序構造が光学顕微鏡によってどのように見えるかについて理論計算を行なうことにより、実験で得られた顕微鏡像が実際にハーフスカーミオンに由来するものであることを明らかにした。
また、ハーフスカーミオンは格子を組むことも孤立した粒子のように振る舞うこともできることや、ハーフスカーミオンの格子は光学顕微鏡下で熱揺らぎによる明滅を示すことなどについても、理論と実験の両面からの考察を行っている。
同研究グループは、「数百nm程度の構造が光学顕微鏡でどのように見えるかを理論的に考察するのは、困難を極めました」とする一方で、「顕微鏡像の計算手法は、液晶に限らないさまざまな微細構造の研究に利用できると期待しています」とコメントしている。