東京工業大学(東工大)は8月26日、分子カプセルが、水中で砂糖の主成分であるスクロースを選択的に包み込むことを発見したと発表した。

同成果は、東京工業大学科学技術創成研究院化学生命科学研究所 山科雅裕博士研究員と吉沢道人准教授、京都大学大学院理学研究科 林重彦教授らの研究グループによるもので、8月25日付の米国科学誌「Science Advances」に掲載された。

グルコースやスクロースなどの糖類は、複数の水酸基を持つため、水に溶解した際、水分子と多点の水素結合を形成する。そのため、他の生体分子に比べて、水中で糖構造を識別することは困難である。これまで人工的な糖レセプターの開発は行われてきたが、その大部分は有機溶媒中に限られたものであった。

そこで同研究グループは今回、分子カプセルが持つ「芳香環に囲まれた適切な形と大きさのナノ空間」の利用に着目。炭素に結合した水素と芳香環の間に働く静電的な相互作用であるCH-π相互作用を駆動力とした糖分子の選択的な内包が達成できると考え、単糖のグルコースやフルクトース、二糖のスクロースやトレハロースなどに対して実験を行った。

この結果、下図中の1のような構造を持つ分子カプセルが、水中でスクロースを高選択的に内包できることを明らかにした。また、分子カプセルは、天然のスクロースより、スクラロースやアステルパームなど、より甘みの強い人工甘味料を優先的に内包するという。

(a)グルコース、フルクトース、スクロースの構造式(b)分子カプセル1による水中でのスクロースの内包 (出所:東工大プレスリリース)

同研究グループは、今回の成果について、分子レベルで未だ解き明かされていない、“甘さ”を識別する生体レセプターの機構の解明や、さらに強く感じる“甘さ”分子の探索や合成研究への展開が期待されるものと説明している。