東京工業大学(東工大)は8月28日、金属間化合物で電子がアニオンとしてふるまう新しい電子化物を発見したと発表した。
同成果は、東京工業大学科学技術創成研究院フロンティア材料研究所 細野秀雄教授・元素戦略研究センター長らの研究グループによるもので、7月31日発行の「Advanced Material」、8月14日発行の「Angew. Chem. Int. Ed」、8月15日発行の「npj Quantum Materials」に掲載された。
同研究グループは2003年に12CaO・7Al2O3(C12A7)を使って、室温・空気中で安定な電子化物(エレクトライド)の合成に初めて成功しており、2011年には電子化物ガラスを、2013年にはアニオン電子が層間に存在する2次元電子化物Ca2Nを報告していた。
これまで見出されてきた電子化物は母体が絶縁体であるが、アルカリ金属などの典型金属の高圧相では、電子が格子間サイトを占有する電子化物であることが明らかになりつつある。今回同研究グループは、電子化物のコンセプトをさらに拡張すべく、母体が複数の金属から構成される金属化合物で電子化物の探索を行った。
通常の金属は、電子が格子全体に平均的に分布しており、格子間に電子が高濃度に存在することは考えにくい。そこで今回、個性の大きく異なる複数の金属から構成される金属間化合物に着目して探索を行ったところ、LaScSi(ランタンスカンジウムシリコン)、Mg2Si(珪化マグネシウム)、Nb5Ir3(ニオブイリジウム)などが、電子化物に相当することが明らかになった。
同研究グループは、今後さらに新しいコンセプトの電子化物が発見され、学術のフロンティアの拡大とともに応用に繋がる新物性が見出されることが期待されると説明している。