富士通と富士通研究所は8月28日、橋梁の表面に取り付けたセンサで振動データを収集し、富士通のAI技術である「FUJITSU Human Centric AI Zinrai(ジンライ)」を利用し、内部の損傷度合を推定できるセンサデータ分析技術を開発したと発表した。
橋梁の点検業務のICT化に向けて、橋梁床版の表面にセンサを取り付け、振動データを利用して損傷程度の評価を行う試みが進んでいるが、従来の手法では床版内部の損傷度合の正確な把握が課題になっていたという。
新技術は、富士通研究所独自のAI技術という時系列データに対するディープラーニング技術を拡張し、IoT機器などに搭載したセンサから取得する、変動の激しい複雑な時系列の振動データから抽出した幾何学的特徴を学習することで、構造物や機器などの状態の正常値との差を表す異常度や状態の急変を表す変化度を数値化し、異常の発生や特徴的な変化を検知する。これにより、多様な社会インフラや機器に対して故障や劣化状態の推定・検証が可能になるとしている。
両社は同技術を、産業活動において利用する技術に関して共同研究を行う相互扶助組織であるモニタリングシステム技術研究組合(RAIMS)による実証実験のデータに適用し、検証した。同技術をRAIMSによる加速試験(輪荷重走行試験)で取得した振動データに適用した結果、同技術で振動データから抽出した幾何学的特徴が、健全時は1つの固まりにまとまっているのに対して、橋梁に内部損傷が発生した際には形状が変化する結果が得られた。
さらに、幾何学的特徴の数値化を行い、そこから算出した異常度および変化度の結果と、床版内部測定用に埋め込んだ歪みセンサの測定結果との一致を確認し、同技術の有効性を立証できたとしている。また、同技術により、橋梁表面に取り付けた1か所の加速度センサのデータ解析結果から広範囲の橋梁内部の損傷度合を推定できることを確認。加えて、同技術は内部歪みの発生を検知することから、損傷の初期段階の推定が可能となり損傷の早期対策に貢献できるという。
今後、実証実験を重ねることにより、橋梁内部の損傷度合を橋梁表面に取り付けたセンサで遠隔から高精度に推定できるようになり、橋梁維持管理業務の高度化を可能にするとしている。両社は同技術に関して、実際の橋梁の振動データを使った実証を重ね、2018年頃の社会実装を目指す。