台湾TrendForceのディスプレイ市場調査部門であるWitsViewは8月24日、スマートフォン(スマホ)市場におけるインセル(In-Cell:タッチパネル機能をTFT液晶セル内に組み込む方式。タッチパネル機能をガラス基板上に作り込む方法であるオンセル(On-Cell)に対する形でインセルと呼ばれる)型タッチパネルの普及率が、2017年末までに31.9%に達するとの予測を行った。
以前の予測は29.6%であり、これが2ポイントほど上方修正された形となる。この背景としては、タッチパネルコントローラICとディスプレイドライバICを1チップ化したICである「TDDI(Touch and Display Driver Integration)」の技術が成熟し、パネル業界が急速に適用しはじめたことが挙げられる。
WitsViewの調査ディレクターであるBoyce Fan氏は 「インセルの技術は過去2~3年で大幅に進歩した。TDDIチップと組み合わされたインセル型タッチパネル機能は、市場の主流となりつつあり、ハイブリッド・インセル型(インセル型と、ディスプレイのガラス基板の上にタッチパネル機能を載せたオンセル型の両方の構造を合わせ待った仕組みのタッチパネル)を置き換え始めている」と市場の動きを読み解く。
また、TDDIチップの有力なサプライヤとしては、米Synapticsや台FocalTechが挙げられるが、この2社の動向については、「インセル技術は、過去数年にわたり、FHD(フルHD)解像度のディスプレイを搭載したモデルなどのハイエンドのスマートフォンに用いられてきた。インセル技術がハイエンド市場向けとして位置付けられていたころは、Synapticsがしばらくの間、TDDIの主要なサプライヤであったが、FocalTechが市場に参入して以降、ハイディフィニション(HD)なスマートフォン用TDDIチップの開発が加速され、その後、スマートフォンの種類の増加とともに、HDスマートフォンディスプレイ用のTDDIの出荷個数が増加してきた。その結果、現在ではSynapticsとFocalTechはそれぞれFHDとHD市場の分野をほぼ独占している」とも説明している。
WitsViewは、スマートフォン市場におけるTDDIチップと組み合わせて使われるインセル型タッチパネル機能のシェアは、2016年の約6%から2017年の約14%に拡大すると予測している。
以前は、インセル型はコストが高く、インセル対応のTDDIのICコンポーネントの平均販売価格も高かったため、インセル型の価格を引き下げることは不可能だった。しかし、パネルメーカーとIC設計メーカーは、パネル設計におけるフォトマスクの廃止やインターレース回路の採用を含め、製品のコスト構造の最適化を図ってきた。その結果、TDDIの価格は引き下がり、近年では急落状態となっている。これについてWitsViewでは、NovatekやHimaxなどといったTDDIを提供するICチップベンダが増加したところが大きいとしているが、こうした価格の引き下げ効果により、結果としてスマートフォン市場におけるインセル型タッチパネル機能の搭載機種数は増加。2018年には、市場におけるシェアが37.6%にまで拡大するのでは、との予測を示しているほか、TDDI+インセル型タッチパネルの普及率も約22%に達するとの予測を示している。