大阪大学(阪大)は8月25日、フッ素樹脂に対して、ヒーターで加熱しながらプラズマ処理することで、低コストで高接着性が得られることを明らかにしたと発表した。

同成果は、大阪大学大学院工学研究科精密科学・応用物理学専攻 山村和也教授、附属超精密科学研究センター 大久保雄司助教、兵庫県立工業技術センター 柴原正文研究員、長谷朝博研究員、本田幸司研究員らの研究グループによるもので、8月25日付の英国科学誌「Scientific Reports」に掲載された。

フッ素樹脂は、水や油や汚れ等の付着を防止する特徴を持つ反面、異種材料との接着が極めて困難であることが知られている。現状ではナトリウムを含む劇薬にフッ素樹脂を浸漬して表面改質することで高接着性を確保しているが、作業者の身体的負担が大きく、環境への悪影響も大きいという問題がある。

同研究グループは、高分子材料の表面に大気圧プラズマを照射し、表面を活性化して異種材料同士の接着性を向上させる研究に取り組んできており、これまでに、高電力を印加してプラズマを発生させながら加熱することで、フッ素樹脂と異種材料の強力接着を実現していた。しかし、高電力を維持したままプラズマ処理範囲を大面積化しようとすると、装置の改造費用が高額となるなどの課題があった。

今回の研究では、低電力でプラズマ処理した場合、高電力でプラズマ処理した場合、低電力でプラズマ処理しながらヒーターで加熱した場合の3つの条件において比較調査を実施。この結果、高電力でプラズマ処理した場合と低電力でプラズマ処理しながらヒーターで加熱した場合では、いずれもゴムが材料破壊する程の高接着性が得られ、表面硬さがいずれも1.7倍以上増加していたことが明らかになった。

これにより、装置改造の制約条件が大幅に緩和されることから、既存の装置の簡易改造で熱アシストプラズマ処理が可能となり、低コストでプラズマ処理の大面積化が容易になるものと考えられる。また同研究グループは、熱アシストプラズマ処理の表面改質メカニズムも明らかになったため、学問的にも意義があるものと説明している。

プラズマ処理中のヒーター加熱の効果(青:ブチルゴム、白:フッ素樹脂)。ヒーター加熱するとフッ素樹脂にくっつけたゴムが剥離試験中に材料破壊する (出所:阪大Webサイト)