科学技術振興機構(JST)は、高研磨レートと表面粗さ・平坦性を高水準で両立する研磨パッドの開発を行ったと発表した。

パッド断面(左)、ナノファイバー断面(右)の拡大写真(出所:JSTプレスリリース)

同研磨パッドは、立命館大学理工学部の谷泰弘教授らの研究成果をもとに、2013年10月~2017年3月にかけて帝人に委託して、企業化開発を進めていたもの。SiC(炭化ケイ素)、GaN(窒化ガリウム)などは、省エネルギーに資するパワー半導体の材料として期待を集めているが、例えばSiCの硬度はSi(ケイ素)の約4倍であるなど、化学的・熱的に安定であることから、基板として利用する際の仕上げ加工が極めて難しく(難加工性半導体材料)、加工プロセスの高速化、低コスト化が課題となっていた。

従来品と開発品により、ほぼ同じ条件でSiC基板を研磨した時の研磨前後の形状の比較。開発品の方が、より滑らかになり、同時に平坦性が損なわれ難い(ロールオフが少ない)。(出所:JSTプレスリリース)

今回開発した研磨パッドでは、繊維表面積が大きく、繊維間空隙数の多いナノファイバー繊維(繊維直径700nm)を用いて不織布を作成し、スラリー(研磨剤)の吸込み・付着性を向上させた。ナノファイバーの繊維間で砥粒をキャッチすることで、作用砥粒数が増加し研磨レートが向上し、また、ナノファイバーは繊維表面積が大きいことから、大きなゼータ電位をもつため、スラリー中の砥粒の凝集を抑制する効果もあり、表面粗さも向上(ウエハの表面がより滑らかになる)したということだ。また、今回の開発では、高硬度樹脂を高密度に含浸する技術も確立。含浸させる樹脂として、既存樹脂(ウレタン)を用いた研磨パッドの他、次世代樹脂を用いた研磨パッドも開発された。

今回の開発により、難加工材の研磨プロセスの高速化、低コスト化が見込まれるという。難加工材半導体の生産性が向上することで、省エネルギー効果を有する高機能半導体の普及が加速することが期待されるということだ。