シュナイダーエレクトリックは8月23日、都内で記者会見を開き、インダストリー事業戦略の説明会を開催した。同社では昨年末に同事業を立ち上げており、今後の日本における事業展開を中心に説明を行った。
冒頭、シュナイダーエレクトリック インダストリー事業部 バイスプレジデントの勝村友一氏は「従来、われわれは日本市場においてHMI(Human Machine Interface)の1つであるプログラマブル表示器『Pro-face』のみを展開していたのが実情だ。富士経済が実施した2015年のFA製品別市場規模の調査では、HMIは300億円であり、すでに大部分のシェアをわれわれは占めている。しかし、ACサーボモータ/ドライブやプログラマブルコントローラ(PLC)、汎用インバータの市場規模は600億円~1200億円と日本では大きな市場ではあるものの、これまで一切タッチしていなかった。そのため、今後はこの分野への製品提供を目指し、成長していく。厳しい市場であると認識しているが、近年ではIoTやスマートファクトリーなどが充実していることから、顧客が身近に感じられる環境になってきており、われわれが有するインダストリー向けプラットフォーム『EcoStructure』を軸にした製品を顧客に提供する」と述べた。
また、同氏は「2015年の国内FA機器の販売対象別構成では装置(セット)メーカーが80%を占めており、これまで製品を展開していなかった分野に対し、どのように展開していくのかということに加え、すでにシェアを有するHMIのシェアをどのように伸ばすのか、そしてこれらを行う際にターゲットとしては装置メーカーが市場の中で大きいため、装置メーカーに合わせたアプローチに取り組む」という。
同社ではインダストリー事業における国内展開の戦略として、既存製品では既存顧客にオペレーションの最適化を施し、新規顧客に対してはソフトウェアとハードウェアの融合した製品などを提供する。一方、新たに投入する製品・ソリューションでは、既存顧客にPro-faceとのシナジーを提供し、新規顧客にはターゲットセグメント向けマシンソリューションなどを提供するほか、既存・新規顧客両方に対し、海外展開をサポートする考えだ。
同氏は「特に、ターゲットとしている装置メーカーへのアプローチとして、まずはコネクティッド、エッジコントロール、アプリ、ソフトウェアを揃え、これをベースにマシンソリューションへとつなげ、販売体制を整える。Pro-faceに関してはソフトウェアとハードウェアを融合させて強化し、その後はマシンソリューションで構築した顧客の装置同士をつなげることで、工場における生産ラインの最適化を図るスマートマシーンのアプローチを目指していく」と、説明した。
日本展開における3つのポイントとは
勝村氏は、インダストリー事業の日本展開のポイントとして「日本企業の海外展開の強力なパートナー」「Pro-faceとのシナジー」「ターゲットセグメントへのソリューション展開」を挙げた。
日本企業の海外展開の強力なパートナーについては、すでに100カ国以上で事業をサポートし、グローバルにおいてULやCE、ANSI、IECといった工業規格をカバーしているほか、多くのグローバルアライアンスを有しているため、これらを活用してパートナーを支援していく。
Pro-faceとのシナジーでは、今後ソフトウェアとハードウェアをバンドルした製品を提供する。また、工場で使われているUPSやセンサRFID、温調計、電源、モータースターター、サーボモータ/ドライブ、インバーター、HMI、PLC、プログラミングソフトウェアなど、オートメーションを構成するさまざまな機器を展開していくことに加え、すでに販売している統合ソフトで各機器を制御できる環境を構築する。
ターゲットセグメントへのソリューションに関しては、EcoStructureはネットにつながる製品とエッジコントロール、アプリ・アナリティクス・サービスの3つのレイヤーがあり、包装機、搬送機、加工機、ホイスト、ポンプ、空調冷凍のターゲットセグメントに製品を提供する。6つのターゲットセグメントの製品を統合ソフトで制御し、各セグメントの顧客が抱える課題を解決するファンクションブロック(シーケンスプログラムで使用する回路ブロックを部品化し、流用を可能にしたもの)をアドオンで用意する。
さらに、セグメントごとのTVDA(Tested Validated Documented Architecture)と呼ぶ基本的なアーキテクチャの構成図を揃えるほか、アプリケーション/アーキテクチャエンジニア(2020年までに社内専任5人+外部パートナー5社)を各セグメントごとに配置していく。
これら3つのの施策により同社では、インダストリー事業において2020年までに売り上げを現状比20%増に拡大さていく考えだ。