北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)は8月21日、sp2炭素からなる2次元共役有機骨格構造体の開拓に成功したと発表した。

同成果は、JAIST先端科学技術研究科/環境・エネルギー領域 江東林教授、分子科学研究所物質分子科学研究領域 中村敏和准教授らの研究グループによるもので、8月18日付の米国科学誌「Science」に掲載された。

2次元炭素材料は特異な化学・電子構造を有するため、研究開発が盛んに行われている。特に、グラフェンは、sp2炭素原子が2次元的に繋がって原子層を形成し、特異な電気伝導特性を示すことで、さまざまな分野で幅広く応用されている。しかしながら、化学的な手法でsp2炭素原子を規則正しく繋げてsp2炭素シートをつくりあげることは極めて困難で、2次元炭素材料は現状、グラフェンに限られているといえる。

同研究グループは今回、可逆的なC=C結合反応を開発し、C=C結合でsp2炭素ユニットを規則正しく繋げることで、結晶性の高い2次元sp2炭素高分子の合成に成功した。この手法は、さまざまなトポロジーを有する2次元炭素をテーラーメイドで合成することを可能とするものであるという。

今回合成されたsp2c-COFは、拡張された2次元sp2炭素骨格構造を有し、π共役が2次元的に広がっている特徴を示す。また、高い結晶性と安定性を有するとともに、2nmの1次元チャンネルが規則正しく内蔵されている。また、ヨウ素でドーピングすると、電気伝導度が12桁高くなり、室温で優れた半導体特性を示す。

同2次元炭素材料は、極めて高い濃度の有機ラジカル種を共存させることができ、さらに、低温において、これらのラジカルスピンが同じ方向に配列するように転移し、強磁性体になることも明らかになっている。

今回の成果について同研究グループは、今後さまざまな2次元炭素材料の設計と合成が可能になるもので、その特異なπ電子構造に由来する新奇な機能の開発がより一層促進されると説明している。

A)sp2炭素ユニットからなる2次元炭素高分子の合成 B)2次元炭素原子層の構造 C)積層された2次元炭素構造 D)2次元炭素の網目モデル構造、xとy方向にπ共役が広がっている E)積層された2次元炭素の網目モデル構造 (出所:JAIST Webサイト)