名古屋工業大学(名工大)などは8月19日、「白色中性子線ホログラフィ」の実用化に成功したと発表した。
同成果は、名古屋工業大学 林好一教授、茨城大学 大山研司教授、広島市立大学、高輝度光科学研究センター、熊本大学、日本原子力研究開発機構、J-PARCセンター、高エネルギー加速器研究機構、東北大学金属材料研究所らの研究グループによるもので、8月18日付の米国科学誌「Science Advances」に掲載された。
白色中性子線とは、さまざまな波長を含む中性子線のことで、さまざまな波長の光を含んで白色となる可視光に倣って命名された。同研究グループは今回、J-PARCの白色中性子源に着目。物体を3次元的に記録する撮像法であるホログラフィと白色中性子線を組み合わせることで、複数の波長で多重にホログラムを記録でき、従来技術と比較して非常に精密な原子像を取得することができると考えた。
実際に、白色中性子線ホログラフィの高再現能力を、蛍石(CaF2)単結晶にユウロピウム(Eu)を1%程度添加した結晶の測定を行うことによってデモンストレーションを行ったところ、本来+2価のカルシウムがあるはずの位置にユウロピウム(+3価)が入ったことにより、ユウロピウム近傍のカルシウムが本来の位置から大きくずれていること、また、余分なプラス電荷を打ち消すために-1価のフッ素原子があるべきでないところに入り込んでいることが明らかになった。この侵入フッ素は原子像強度が弱いが、白色中性子線ホログラフィであれば、こういった微弱な像も逃さず可視化することができるという。
白色中性子線ホログラフィは、X線回折法や電子顕微鏡法では観測できない軽元素の微量不純物の構造を感度よく観測できる点に特徴があることから、同研究グループは今回の成果について、添加元素によって性能を制御する半導体材料、電池材料、磁性材料などの機能解明とともに新規材料開発に向けたブレークスルーにつながるものと説明している。