北海道大学は、欧州で問題となっている西洋ヒノキ花粉症とモモや柑橘類に対する食物アレルギーの共通の原因物質が、植物界に広く存在する防御ペプチド(タンパク質)ファミリーであることを解明したと発表した。

同成果は、同大大学院先端生命科学研究院・国際連携研究教育局の相沢智康 准教授とフランスパスツール研究所のPascal Poncet博士を中心とした国際共同グループによるもの。詳細は、米国アレルギー学会の「Journal of Allergy and Clinical Immunology」(オンライン版)に掲載された。

アレルギーの代表例である花粉症患者には、花粉だけではなく特定の果物や野菜に対してもアレルギー症状を示す場合があり、花粉食物アレルギー症候群と呼ばれている。この原因は、花粉アレルゲンと植物性食物アレルゲンに共通する抗原分子による交差反応と考えられており、口腔内にかゆみを伴う程度の軽症から、喘息やアナフィラキシーなどの重篤なものまで多くの症状を伴う。しかし、その発症機構には未知の点も多く残されている。

今回、同研究グループは、酵母を用いた遺伝子組換え技術による植物由来ペプチド抗原の人工的な生産に成功し、ヨーロッパの花粉食物アレルギー症候群患者の血清に対する反応の解析を進めた。

その結果、西洋ヒノキ(イトスギ)の花粉に含まれるペプチドが、モモや柑橘類に対する花粉食物アレルギーの原因抗原の1つであることを明らかにした。さらに、このペプチド抗原は、植物の防御タンパク質の1つとして植物界全体に広く存在することから、さまざまな植物関連アレルギーの原因物質となっている可能性も示唆される。

同研究グループによれば、現在、花粉症の治療薬の開発では、この研究で重要性が発見されたペプチド抗原の作用は考慮に入れられておらず、今回の発見が新たな治療薬の開発につながる可能性があるという。また、今回のペプチドが植物界に広く存在するものであることから、新たなアレルゲンの発見と治療法の開発につながる可能性も期待されるとしている。