東京大学生産技術研究所は、銅触媒によってα-ブロモアミド化合物とアミンとのアミノ化反応に成功し、さまざまな非天然型アミノ酸誘導体を作る基本技術を開発したと発表した。
同研究は、山口大学大学院創成科学研究科の西形孝司准教授と、東京大学生産技術研究所物質・環境系部門の砂田祐輔准教授らの研究グループによるもので、同研究成果は「Angewandte Chemie, International Edition」に掲載された。
生命は20種類の天然アミノ酸を利用することでその活動を維持しているが、天然のアミノ酸はその種類や構造に制限がある一方で、天然では得られない非天然型アミノ酸の種類や構造には制限はなく、期待される機能も無限に付与することが理論上は可能となっている。特に、非常に大きな構造を持つアミノ酸は、画像診断薬や特定の細胞と強く相互作用することが知られているが、構造の大きな第4級炭素中心を持つ構造になると、カルボニル(-COR)の隣接炭素上にアミノ基を導入することは立体的な制限から極端に難しく、利用できるアミノ酸の種類が限られていた。
そこで、同研究グループは、銅触媒によるα-ブロモアミド化合物とアミンとのアミノ化反応技術を開発した。このアミノ化反応は、銅触媒を用いてα-ブロモアミド化合物の臭素(Br)とアミンを交換することで進行する。この際に重要となるのがラジカルと銅アミドと呼ばれる活性種で、銅アミド活性種がα-ブロモカルボニル化合物と銅触媒との反応から生じたラジカル活性種と反応することでアミノ化反応が進行する。
この原理を利用すると、立体的に非常に大きな反応部位でアミノ化を行うことができ、また、アンモニアやさまざまなアミンを使用することが可能であり、さまざまな非天然型アミノ酸誘導体を作ることができるようになる。今後は、光学活性な非天然型アミノ酸も合成できるよう、反応系をさらに工夫していく予定だということだ。