IDC Japanは8月21日、国内企業の情報システム子会社の現在および将来に関する調査結果を発表した。これによると、情報システム子会社は企業におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)への取り組みが本格化する中で、それを支える組織に自らを変革できるかどうかの岐路に立っていることがわかったという。
企業ITの専門家集団である情報システム子会社は、大企業を中心に設立し、社内システムの開発・運用業務を中心に、一部は本社やグループ会社以外にもサービスやパッケージソフトウェアを提供する外販を行っている。
IDCは、これらの情報システム子会社が現在担っている業務や抱えている課題、将来の方向性を調査するため、情報システム子会社を有する企業の経営者・マネージャー156人に対するアンケート調査を行った。
現在、情報システム子会社が担っている役割については、既存システムの開発・運用や新たな業務システムの開発など、「今ある業務」に関するシステム関連業務を行っているとした回答者が全体の約4分の3を占め、DXまで担当している情報システム子会社は13.5%にとどまったという。
情報システム子会社がDXにまで業務を拡大することができない理由は、情報システム子会社が現在抱えている課題にその一端があると同社は推測。アンケート回答企業のうち、情報システム子会社を管轄するなど、つながりの深いIT部門マネージャーに情報システム子会社の課題を聞いたところ、「人材不足」が1位となった。
また、人件費の高さや世代間のスキル継承などと共に同率2位に挙がった「本社に対する提案力不足」と併せて、現時点で情報システム子会社にはDXを担う人材が量・質ともに不足しているという。
一方で、多くの国内企業ではデジタル・トランスフォーメーションに向けての取り組みが始まっており、情報システム子会社はその実行を担う組織としての役割が期待されている。実際、情報システム子会社の将来について聞いた質問に対しては、スキル転換や役割の変更を進めていくという回答が4割以上を占めた。
同社のリサーチ第3ユニット グループディレクターである寄藤幸治氏は「情報システム子会社は、デジタル・トランスフォーメーションに対応するため、既存業務の大胆な見直しと、新規デジタル技術やデザイン力の体得といったスキル転換を同時に行なっていく必要がある。そのため、これまで開発や運用のパートナーであったITベンダーを、自らの業務変革パートナーとして活用することも視野に入れるべきである」と分析している。