北海道大学(北大)は8月14日、二段階にわたって分子をテンプレート化することによって、ピクセル状のパターン構造を任意の液晶材料で作成することに成功したと発表した。

同成果は、北海道大学大学院工学研究院応用物理学部門 佐々木裕司助教、折原宏教授らの研究グループによるもので、7月31日付の独科学誌「Advanced Materials」に掲載された。

長さ数nmの棒状の分子が同じ方向に並んだネマチック液晶は、分子の長軸方向と短軸方向で光の屈折率や誘電率が異なる「異方性」という性質を有する。この異方性を利用して物質の光学的性質を電気的に変化させることができるが、既存の技術を超えて液晶材料をさらに新しい用途へ応用するには、分子を微細な領域で精密に並べることが必要となる。

これまでの研究で、電圧を加えるだけで多数のトポロジカル欠陥を規則正しく配置させ、分子をピクセル状に並べる方法が発見されていたが、使用できる液晶化合物の種類に制限がある、電圧を切ると構造が崩れてしまうといった欠点もあった。

今回、同研究グループは、一段階目のテンプレートとして、ピクセル状の液晶分子配列を電気的に作成し、その中に高分子ネットワークを埋め込み構造を安定化することで、電圧を加えなくても構造を維持できることを実証した。

A:用いた化合物 B-D:紫外線照射によるピクセル状構造の高分子安定化。光を当てることでピンク色のモノマー同士を重合することで高分子ネットワークを形成する。このネットワークが骨組みの役割を果たし、電圧を加えなくても安定的な構造を保持することが可能となる (出所:北大Webサイト)

続いて、二段階目のテンプレートとして、埋め込んだネットワークを骨組みに用いた。周囲を異なる種類の液晶分子で入れ替えたところ、新たに埋め込まれた分子も電気や温度によって光学物性を制御できることを示した。したがって、二段階にわたって分子をテンプレート化することによって、ピクセル状のパターン構造が任意の液晶材料で作成できたものといえる。

試料セルを液晶に直接浸し、ネットワーク内の分子を置き換えた様子。Aでグリーンで表された分子がEではブルーの分子に置き換わる (出所:北大Webサイト)

今後は、より高濃度なネットワークで安定化することによってフィルム状にし、温度や光などで変形・伸縮可能な光学材料へと繋げていきたい考えだ。