新潟大学は、針状の「ダイヤモンド電極センサー」を用いた薬物モニターシステムを開発し、極めて狭い空間でのさまざまな薬の振る舞いとその作用を、リアルタイム計測することに成功したと発表した。

針状ダイヤモンド電極センサー(出所:新潟大学プレスリリース)

微小ガラス電極センサー(出所:新潟大学プレスリリース)

同研究は、新潟大学大学院医歯学総合研究科の日比野浩 教授、緒方元気 助教らと、慶應義塾大学理工学部の栄長泰明 教授らの合同研究チームによるもので、同研究成果は、8月10日に科学雑誌「Nature Biomedical Engineering」のオンライン版に掲載された。

口や注射により体内に入った薬が標的とする細胞のかたまりに届いているかどうか、そして、届いた薬の濃度と細胞の働きの時間ごとの推移を知ることは、薬の効果や副作用を調べるうえで極めて重要となる。しかし、極めて狭い空間(1mm以下)では、これらの指標を今までの方法で測ることができなかった。

今回新たに開発された薬物モニターシステムは、2つのセンサーから成っている。ひとつは、先のサイズが1mmの25分の1(40µm)で、ホウ素を含んだ特殊なダイヤモンドでできた「針状ダイヤモンド電極センサー」であり、薬の濃度を敏感に測ることが可能になる。もうひとつの「微小ガラス電極センサー」は、先が1mmの1000分の1(1µm)で、細胞の電気信号を直接観察することができる。これら2つのセンサーを細胞のかたまりの近くに入れることにより、刻々と変わる薬の振る舞いと細胞の働きを、同時にリアルタイムでモニターすることに成功したという。

同研究で重要な点のひとつは、薬のセンサーにダイヤモンドを使ったことにある。一般に、電極センサーで水に溶けた物質を測る場合には、それぞれの物質にとって理想的な電圧条件を探すが、時に、物質の反応に加えて、水の電気分解も起こってしまう。予備実験で、通常の材料であるカーボン(炭素)をセンサーに用いてみると、水の反応に薬の反応がかなり隠れてしまったが、ダイヤモンドを利用すると薬の濃度に比例した反応がきれいに観察できた。また、電極センサー自身が持つノイズも非常に低く、少ない量の薬を鋭敏に測れることがわかった。ダイヤモンドは、体にやさしい素材で汚れがつきにくく安定した反応が得られるため、体内での計測に欠かせないものになると期待されてきたが、今回、薬の計測への応用が示されることとなった。

同研究で開発した技術を活用・応用することにより、安全で有効な創薬の発展や、副作用を抑え薬効を最大にする薬の投与法の考案、既存薬から別の病気に効く薬を見つけだすドラックリポジショニングの推進、オーダーメイド治療法の展開などが期待されるということだ。