お茶の水女子大学(お茶大)は8月14日、ゴムシートに生じた亀裂の進展する速度が、秒速1mm未満から秒速1m以上となり、ゴムの高速破壊を引き起こす現象「速度ジャンプ」のメカニズムを解明したとを発表した。

同成果は、お茶の水女子大学の作道直幸 特任助教と同大奥村 剛 教授らのグループによるもので、内閣府 革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)の伊藤耕三 プログラム・マネージャーの研究開発プログラムの一環として研究が行われた。詳細は英国の学術誌「Scientific Reports」に掲載された。

ゴムの高速破壊を引き起こす現象「速度ジャンプ」とその再現モデル(出所:お茶の水女子大学Webサイト)

近年、「速度ジャンプ」を起こりづらくすることが、ゴムの耐久性や耐摩耗性の向上につながることが分かってきた。しかし、この現象は60年前から知られているにも関わらず、その発生メカニズムは未解明であった。このメカニズムが解明されれば、経験則による試行錯誤に頼らずに、既存技術の枠を超えた強固なゴム材料の開発が可能だとされ、基礎的にも応用上も重要な問題であった。

今回の研究では、ゴムの亀裂進展問題を数学的に取り扱うために、数値シミュレーションなどで使われる格子モデルを、亀裂進展問題に特化させて単純化して、ゴムの理論として標準的な線形粘弾性理論を組み入れた。この数理モデルの数学的な解から、「速度ジャンプ」が再現されたという。また、亀裂の進展速度がある限界値に達すると、亀裂の先端でゴムがガラスのように硬くてもろい固体のような状態になる「ガラス化」が起こり、それにより速度ジャンプが起こることを明らかにした。

さらに、今回の理論から、ゴムを構成するひも状高分子の網目を粗くすること、および、ガラス化したときの硬さを強化することで速度ジャンプの抑制が達成できることがシンプルな数式で示されたという。これらの指導原理に基づけば、耐久性や耐摩耗性の向上したタフな新規ゴム材料の効率的な開発が期待できるとしている。

今回の成果について同研究グループでは、今後、タイヤゴムの耐久性や耐摩耗性向上だけでなく、コンタクトレンズなど医療分野や、再生医療のための医用材料など、ゴム以外のゲル、プラスチック、様々なポリマー材料のタフ化にもつながる可能性があるとしている。