東京理科大学は8日、同大学基礎工学部電子応用工学科の谷口淳教授と、オーテックスの日和佐伸氏の研究グループが、新しく開発した「高硬度で防汚性を持つ紫外線硬化性樹脂」を用いて「モスアイ構造」の転写に成功したことを発表した。
モスアイ構造はナノオーダーの針状構造で反射防止効果があるため、これまで同構造を用いた反射防止フィルムが大型ディスプレイ表面に使用されてきた。しかし、この構造はナノオーダーの凸凹形状のため、手で触れると破損や油分の付着が生じ、反射率が劣化する傾向にあった。また、指紋が付着すると拭き取れないという問題点があった。
今回、研究グループが新たに開発したモスアイ構造は、光の反射を防止するモスアイ構造の強度が向上し、触っても壊れず、反射防止効果に加えて視認性も向上しているまた、防汚性の向上により油分を弾き汚れても容易に拭き取れる。これにより、スマートフォンなどのタッチパネルへも使用できるようになり、さらにモスアイ構造表面の水の接触角は150°以上で超撥水性を示すため、この性質を利用した製品などにも使用できるという。
なお、モスアイ構造の金型原盤は、同大学が保有する特許技術で作製し、転写に関してはナノオーダーの転写が可能なナノインプリント技術が用いられている。新開発品の樹脂を用いて作製されたモスアイ構造は、スチールウール700gfの擦過試験にも耐え、指紋のふき取りも容易に行えたという。これにより、触っても壊れないタッチパネル用反射防止フィルムが実現した。
今後は、タッチパネル表面の保護、スマートフォン、タブレットなどの表面の保護や視認性向上フィルム、ディスプレイ等の視認性向上、太陽電池表面での反射防止等に貢献すると考えられる。