国立がん研究センターは、切除不能な進行大腸がん患者に対して、TAS-102(トリフルリジン・チピラシル塩酸塩)とベバシズマブを併用して投与する医師主導治験を実施し、TAS-102のみを投与した過去の臨床試験の治療成績と比較して、生存期間の延長およびがんの進行抑制が認められたことを確認したと発表した。
同研究は、国立がん研究センター東病院の吉野孝之消化管内科長らの研究グループによるもので、同研究成果は、日本時間7月29日付けで英国学術雑誌「The Lancet Oncology」に掲載された。
より有効な新しい治療法の開発が期待されている大腸がんにおいて、細胞や動物を用いた基礎研究の結果、2014年に日本で切除不能な進行大腸がんに世界で初めて承認された抗がん剤「TAS-102」と、大腸がんをはじめ多くのがん治療の成績を向上させた血管新生阻害剤「ベバシズマブ」を併用すると、TAS-102のみで治療を行うよりも有効である可能性が示された。 そこで、国立がん研究センターでは東病院を中心に、日本の代表的ながん専門病院と共同で、標準治療に対して抵抗性となった大腸がん患者を対象に、TAS-102とベバシズマブの併用療法の臨床試験(C-TASK FORCE試験)を医師主導治験として実施した。
同研究グループは、2014年2月~2014年7月に、標準治療に対して抵抗性となった大腸がん患者25名に対し、TAS-102とベバシズマブの併用療法を実施。その結果、同併用療法を受けた大腸がん患者の約70%に、がんの増大を抑制する効果が認められ、その効果は中央値で約5.6カ月の間、持続することがわかった。
今回の結果で、標準治療に対して抵抗性となった大腸がん患者に、TAS-102とベバシズマブの併用療法が有効であることが示された。同併用療法は切除不能な進行大腸がんの新しい治療法になることが期待され、さらに大勢の患者を対象に効果や安全性を検証する臨床試験が計画されているという。また、標準治療のより早い段階でTAS-102とベバシズマブの併用療法の有効性を検証する臨床試験も計画中だということだ。