KDDI、独立行政法人中小企業基盤整備機構北海道本部(中小機構北海道)、シスコシステムズ、飯田農場、帯広大正農業協同組合(JA帯広大正)、システムデザイン開発(SDD)、ディーディーエル(DDL)、長沼商事の8者は8月1日、北海道帯広市の飯田農場においてIoTを利用した農業効率化の実証実験を9月30日までの予定で開始した。

LoRaWAN搭載センシング機器とLTEアンテナ

北海道の農業は広大な耕作面積で大規模に展開し、多様な農作物を栽培している。その中でも屋外で作物を栽培する露地栽培は、施設栽培に比べて生産コストが安く畑面積の拡大が容易である一方、天候などの影響を受けやすく廃棄ロスの多さが課題だったという。

KDDI、中小機構北海道、シスコの3者は、北海道地域でIoTを利用した中小企業の事業創出取り組みを行っており、今回の実証実験は第1号案件であり、飯田農場、JA帯広大正、SDD、DDL、長沼商事によるビジネスアイデアを選定した。

同実験では、IoT向け通信技術であるLPWA(LoRaWAN)を利用し、露地栽培にとって重要な外気温や湿度、土中の温度や含水率などを測定し、リアルタイムでの可視化を実現することで、種まきや出荷に最適な時期の把握、水撒きの最適化を行い、大根など農作物の効率供給を目指す。また、LoRaWANの利用により通信費用を最小化するとしている。

また、センサによって外気の気温・湿度、土中の温度・含水率・EC値 (電気伝導率) のデータを取得・蓄積・解析し、種まきや出荷に最適な時期の把握、農薬散布や水撒きの最適化を検証する。

ネットワーク構成図

ネットワーク構成図におけるGWはゲートウェイであり、基地局に相当する。NWSはネットワークサーバで、基地局との通信を認証する。AISは分析サーバであり、取得したデータを分析し利用可能なデータに変換する。APSはアプリケーションサーバで、デバイスと連携してサービスを提供する。

各者の役割

同実験においてKDDIは、LoRaWANのエリア化とネットワークの運用を担当する。中小機構北海道は、北海道内の中小企業に対するビジネス・マッチンク機会の創出とIoTビジネスに関する情報提供を担う。シスコは、LoRaWANネットワーク構築など技術全般を支援する。

また、JA帯広大正は、組合員である飯田農場の新たな取り組みに対する支援を実施する。飯田農場は、実証実験環境の提供と運用に関するアドバイザーを担当する。SDDは、データ分析・解析サービスの提供、LoRaWAN搭載センシング機器の設置・運用、現地農家の紹介を担う。DDLは、LoRaWAN搭載センシング機器の開発を担当する。長沼商事は、LoRaWAN機器の設定・設置・保守を担う。

今回の実験により、農作物育成に関する知識・技術のデータ化と蓄積・解析結果を利用し、属人的で暗黙知であった知識・技術を形式知にすることで伝承が容易になり、昨今の農家にとって重要な課題となっている後継者育成課題の解決に貢献するという。8者は、IoTを利用して幅広く農業分野に役立てていくことを目指していく。