東京工業大学(東工大)は7月27日、粒径1nm程度の極微小なナノ粒子に3種類の金属を精密に合金化する手法を開発したと発表した。
同成果は、東京工業大学科学技術創成研究院化学生命科学研究所 山元公寿教授、山梨大学大学院医工農学総合研究部 高橋正樹助教らの研究グループによるもので、7月26日付の米国科学誌「Science Advances」に掲載された。
極性官能基を持たない炭化水素化合物の酸化反応には、有害な有機溶媒中で金属の過酸化物を多く使用する手法が用いられてきたが、近年、このような溶媒を使用せず、空気中の酸素を用いたクリーンな触媒的酸化反応の研究が行われている。なかでも、貴金属のナノ粒子が多孔質のカーボン材料や金属酸化物へ固定された担持触媒が有望な触媒系として期待されている。
このような不均一系触媒の反応性を決めるうえでは、金属ナノ粒子の形状や粒子径、金属組成が重要な要素となり、特に粒子径が2nm以下の粒子では、触媒の粒子径を小さくしていくと、比表面積が大きくなるだけでなく金属表面の電子状態も大きく変化し、それに伴って反応性が大きく変わることがわかっている。しかし、これまで2nm以下の金属ナノ粒子の粒子径、組成の両方を制御できる合成法はなかった。
今回、同研究グループは、樹状型の規則構造を持つ高分子であるデンドリマーを利用して、複数の金属からなる1nm程度の微小な合金ナノ粒子の合成法を開発した。同手法では、さまざまな金属の組み合わせで、一般的なナノ粒子の水熱合成などと比較してより粒径の小さく、個々の粒子の合金組成が均一な合金ナノ粒子を合成できる。
空気中の酸素分子を酸化剤として用いた際の、常圧下での炭化水素の酸化反応における触媒活性を評価したところ、銅原子と他の貴金属からなる合金ナノ粒子が、有機化合物の酸化反応に用いられる市販の白金担持カーボン触媒と比較して、24倍の活性を有することがわかった。合金ナノ粒子表面の銅と他の貴金属の界面の存在により、飛躍的に触媒活性が向上したものと考えられる。
今回の成果について同研究グループは、新たな高機能触媒の設計指針となる可能性があり、触媒反応を用いた不活性な炭化水素から付加価値の高い物質への変換技術の発展に貢献することが期待されると説明している。