科学技術振興機構(JST)は、小松精練がJSTセンター・オブ・イノベーション(COI)プログラムの支援を受け、金沢工業大学 革新複合材料研究開発センター(ICC)との共同により開発した炭素繊維複合材「カボコーマ・ストランドロッド」が、日本ではじめて耐震補強材として国内標準(日本工業規格:JIS)化される見込みとなったことを発表した。
カボコーマ・ストランドロッドは、日本の伝統産業である組紐の技術と、現代の炭素繊維の技術を融合した強さとしなやかさを有するロープ状の材料。外層を合成繊維や無機繊維でカバーリングし、熱可塑性樹脂を含浸させた熱可塑性炭素繊維複合材で、軽量(比重は鉄の1/4)、引張に強い、錆びない、高耐久性、結露しない、作業現場への運搬が容易といった特長を有する。
耐震改修促進法では、増床とみなされなければ炭素繊維を耐震補強材として用いることができる一方で、現行の建築基準法では建造物の柱・梁・土台部分などに使用する構造材として炭素繊維の使用は認められていない。こうした法的制約から、炭素繊維は耐震補強材としては用いられているものの、建築材料としては普及が進んでいない。
しかし、炭素繊維はJIS化により性能特性評価が標準化され、安全・安心で使いやすい建築材料となり得る。今回のJIS化の動きにより、正式に耐震工法として認定を得られれば、一気に技術的な普及が進むものと期待される。
小松精練はこれまで、長野県の善光寺 経蔵や石川県の旧本社社屋「fa-bo」の改修にあたり、カボコーマ・ストランドロッドによる耐震補強工事を行い、施工実績を重ねてその優位性を証明してきた。その後、同社はICCと連携し標準化を目指した。
そして今回、日本規格協会や経済産業省などが審議を重ね、カボコーマ・ストランドロッドは"優れた尖った技術"として「新市場創造型標準化制度」の活用の対象として、「JIS化審議会」の採択を経て、JISに制定される見込みとなった。
同社は今後、カボコーマ・ストランドロッドを耐震補強工法に用いられる補強材として、新たな市場を開拓し、普及が進むよう積極展開するとしている。