サイバネットシステムは7月19日、同社が開発・販売・サポートする汎用可視化ソフトウェアの最新版である「AVS/Express(エーブイエス・エクスプレス) Ver8.4」の販売を開始した。
近年、局地的大雨(いわゆるゲリラ豪雨)などの局所的気象災害の観測・予測のため、空間分解能・時間分解能を高めたレーダーの開発・設置が進んでいるという。同社は、気象関連の研究者を支援するために、これらのレーダーにより取得する大規模な観測データから、災害発生時の大気の3次元構造や時系列変化をより詳細に把握するための可視化ツールの開発を行ってきた。
特に、フェーズドアレイ気象レーダーの可視化については、依頼元である情報通信研究機構(NICT)の協力を得て、初期の観測データから、3次元可視化や動画の作成などに取り組んできた。
今回のバージョンアップでは、これまで開発した機能を「気象データ可視化ライブラリ」として追加。フェーズドアレイ気象レーダーのデータの可視化や、そのほかの気象レーダーや気象解析結果データの可視化にも利用できるという。
また、ドローンなどの外部機器との連携を強化した。これにより、ドローンで空撮した建物や地形などを3次元で再構築しテクスチャを貼ったデータに、シミュレーション結果を重ね合わせることで、リアルなデータの表示を可能としている。
気象データ可視化ライブラリは気象データに特化しており、同ライブラリに登録済みのアプリケーションを利用することで、気象データの可視化に必要となる地図、高さの凡例、複数等数値面、ボリュームレンダリングを併せて表示できるという。
なお、地図はフェーズドアレイ気象レーダーが設置済みの大阪・神戸・沖縄のみを収録しており、別売の「AVS/Express 地図情報可視化オプション」を利用すると、全国の地図を背景画像として利用が可能。
また、可視化状態を定量的に判断するための統計量表示の機能や雨の様子を表現する、新しい表示手法なども用意している。
ドローンなど外部機器との連携は、テクスチャ付きOBJファイルの読み込みで対応する。ドローンによる空撮画像から作成する3次元のデジタルデータは、建築現場の測量や建造物のデジタルアーカイブなど幅広い分野で利用されている。
新バージョンでは、空撮データの代表的なフォーマットであるOBJ(Wave front OBJ)フォーマットに対応。既存のOBJファイルの読み込み機能に、テクスチャの読み込み/表示機能を追加した。
同ソフトに取り込んだ建造物などは、標準の可視化機能と組み合わせることで、例えば温度など他の装置で計測した結果との重ね合わせを可能としている。また、プロジェクタによる大画面立体視表示やヘッドマウントディスプレイ(HMD)を利用したVR観察もできる。なお、HMDの利用にはミドルウェアが別途必要になる。