キヤノンITソリューションズ(キヤノンITS)は7月19日、後払い決済サービスを提供しているネットプロテクションズ(NP)とFinTech領域で協業すると発表した。両社は共同で、「AIを活用した与信審査」と「取引明細のデータ活用」における実証実験を本格展開し、新しいFinTechサービスの創出と高度化を目指す。
NPが提供している未回収リスク保証型の後払い決済サービス「NP後払い」は、加盟店から商品を購入したユーザーが支払う料金をNPが立て替えて加盟店に支払い、それから請求書を購入者へ郵送し代金を回収するという事業モデル。加盟店は代金未回収リスクがなくなるうえに、請求業務負担の軽減などに期待できるという。
実証実験で行う「AIを活用した与信審査」では、「NP後払い」における商品購入者に対する与信審査について、「従来の与信審査判別ロジック」を「AI技術を用いた判別器」に置き換えて与信精度を比較検証する。すでに検証済の実験では、従来の判別器と比較して貸倒取引の見逃し確率を1/5に抑えることができたという。
今後は実証実験を繰り返しながら継続的に検証し、与信システム運用環境への実装を計画。このほか、過去の膨大な取引実績情報を重視しつつも、審査対象取引の情報自体から得られる傾向などを用いて、貸し倒れリスクを算出するという、新たなアプローチの実証実験を共同で展開している。
「取引明細のデータ活用」では、NPの過去の取引実績情報をベースに、キヤノンITSのR&Dセンター言語処理技術部の言語処理技術を活用した実証実験を共同で展開。メタ語と呼ばれる「送料」「無料」などの商品名ではない語句を除去する「データクレンジング」によって、取引明細データの自由記述テキストから商品名を推定し、商品マスタなど教師データがない状態でも顧客の商品購入傾向を把握できるか検証した。その結果として、購入パターンが類似する会員間の類似度を分析し、顧客が興味を持ちそうな商品をレコメンドできる可能性を見出したという。
今後は、教師データとして適切な知識を構築し、顧客と加盟店に対するマーケティング施策の最適化やデータを活用した新たな価値創出を目指す共同実験を行っていくとしている。
両社は今回2つの実証実験で得られた知見を活用し、NPが注力する「データ分析」実証実験をさらに加速・拡大し、「後払い決済事業」の深化、また、新たな事業への展開を含め、継続検討をしていくとしている。