日本サイプレスは7月13日、記者説明会を開催し、Cypress Semiconductorが5月30日に発表した「CCG3PA」と、6月5日に発表した「CCG5」に関する説明を行った(Photo01)。
Cypressはかなり早い時期からUSBに関する製品を手がけており(Photo02)、特にUSB 3.0(今の言い方ならUSB 3.1 Gen1)で事実上のマーケットリーダーになっている(Photo03)とする。またUSB Type-Cでは当初から製品を投入しており、ここでもNo.1のシェアだとする(Photo04)。特にさまざまなリファレンスデザインを多数用意し、さらに最終製品に合わせてさまざまなラインアップを用意してきたのが現在のポジションを築いた、という説明だ(Photo05)。
さてそのCypressのUSB Type-C向けコントローラであるが、USB Type-Cではそもそも追加の信号線(CC/VCONN)がある上に、Power Delivery(PD)が求められるケースもあるため、必要とされる機能ユニットはこれだけある、とする(Photo06)。その機能ユニットに対して、同社のType-Cコントローラがどんな具合に機能を追加していったのか? というのがこちら(Photo07)。ブルーの部分が搭載されている機能であり、これが次第に増えていったのが判る。Photo08は現行の商品一覧であるが、順調にラインアップを増やしているのが判る。また同社はPlugFestに関しても熱心で、すべてのUSB-IFの主催するPlugFestに参加し、相互接続の確認を行っている、としている(Photo09)。
Photo02:2014年末の段階で累積で14億個のコントローラを出荷中 |
Photo03:USB 3.0については、当初はルネサスがホストコントローラでNo.1のシェアを取ったが、チップセットにUSB 3.0のコントローラが統合された後はシェアをどんどん落として言っており、逆にCypressはデバイス側で多くのシェアを取ることに成功したとする |
さてそのCypressが電源アダプタやパワーバッテリー向けに発表したのが「CCG3PA」である(Photo10)。Photo07でCCG3からCCG3PAがASSP、つまりパワーアダプタやパワーバンク(モバイルバッテリー)、USB Charger向けとあるように、こうした電源アダプタ向けに特化した製品となっている。特徴はUSB-PD 3.0とQualcommの推奨するQC 4.0の両対応になっていることで、また電源ユニットの制御に必要な機能なども追加されている。内部回路はこんな感じ(Photo11)で、最小限の外部部品でACアダプタなどを構成可能である(Photo12)。
Cypressからは評価キットも提供されており(Photo13,14)、これをベースに簡単にUSB電源アダプタが構築できるとする。
説明会ではこの評価キットを使い、パワーバンクのデモが行われた(Photo15~18)。
Photo15:中央のバッテリーに、評価キット経由で充電したり、ここから外部機器に充電したり、ということが自由に行える仕組み |
Photo16:QCにもUSB-PDにも対応していない機器には5V/1.5Aで給電 |
このデモでは
- USB-PDに対応した機器にはUSB-PDで給電
- QCに対応した機器にはQCで給電
- どちらにも対応していない機器にはUSB Type-CなりUSB Type-Aの規格範囲内で給電
- Type-CコネクタにACアダプタを繋ぐと、バッテリーに充電
といった動作が自動的に行われることが示された。またUSB-PDのデモでは、ACアダプタを組み合わせて、さまざまな給電モードに自由に対応できることもアピールされた(Photo19~23)。
Photo21:USB-PDのモード1は、5V/3Aの供給。電圧は概ねこれにしたがって提供される |
Photo22:モード2にすると、9V/3Aでの供給に切り替わる |
PHoto23:電圧/電流を自由に変更できるモード3。CCG3PAは20mV/50mA単位で自由に設定値を変更可能 |
ちなみにPhoto21~23のモードは、あくまでもこのテストプログラムのモードであって、USB-PDにそういうモードが定められている訳ではない。ここで特にPhoto23のモード3では、電圧/電流の値を結構自由に変更できるが、この際に活躍するのがCCG3PA内部に搭載されたMCU(Cortex-M0+)である。ちなみに例えば今後、QCとかUSB-PDの仕様が追加になったとかの場合も、やはりMCUへのプログラミングを変更することで対応できる、という話であった。
ちなみに先にもちょっと触れたがCCG3PAはあくまでも制御のみでPMICの機能は持っていない。そこでPMICは別に用意することになるが、CypressによればPMICベンダ6社と協業しており、用途に応じて自由に選択できる、という話であった(Photo24)。
次がThunderbolt 3.0向けとなる「CCG5」である(Photo25)。こちらはCCG3PAの機能に加えて、DisplayPortのAlternate ModeやHDMI over Type-C、Thunderbolt 3.0などをサポートする。リファレンスデザインとしてはHost/Dock用(Photo26)とデバイス用(Photo27)がすでに用意されている。
Photo25:Vconn FETsを強化しているのも違いの1つ。USB PD Subsystemあたり2つのVconn FETsがあり、これが2組で合計4対 |
Photo26:Host/Dockはディジーチェーン接続が可能なように2ポート搭載のCYPD5225が搭載される |
Photo27:デバイス用は1ポートなので、CYPD5125でも足りるはずだが、こちらもCYPD5225が搭載されている |
このリファレンスデザインはIntelが提供するもので、そこにCCG5が選ばれたと言う事で、今後のThunderbolt 3の普及によって出荷数量が増える事が期待される、とう話だった(Photo28)。ちなみにこのCCG5を利用し、1本のType-Cケーブルで接続しながら映像出力と給電をこなす、という実例も示された(Photo29)。
なお今後の展開に関してはもちろんノーコメントだったが、例えばThunderbolt 3に関してはプロトコルを公開しようという動きがある。ということは別にIntelに頼らずにCypressだけでThunderbolt 3のコントローラを構築することも技術上は可能であるが、この辺をFu氏に確認したところ笑ってかわされてしまった。具体的なプランがあるかどうかはともかく、可能性としての検討はしているのかもしれない。