日本ナショナル・インスツルメンツ(日本NI)は7月10日、都内で2017年5月に米国で開催したプライベートカンファレンス「NIWeek 2017」を踏まえた同社の最新状況の紹介を行った。
同社はこれまで、1つのプラットフォームを用いて、基礎研究から最終製品の製造テストに至るまで、一貫したソリューションの提供を行ってきたが、ソフトウェアとしては「LabVIEW」を30年にわたって機能強化を行い、提供してきた。同カンファレンスでは、最新世代となる「LabVIEW 2017」がリリースされたが、それと同時に、同社が今後の30年を築くためのソフトウェアと銘打った「LabVIEW NXG」も発表され、今後はLabVIEWとLabVIEW NXGの双方に投資を行っていくことで、これまで以上の価値をエンジニアなどに提供することで、驚異的な速度で進化する技術への対応を図っていくとしている。
LabVIEW NXGの開発に至った最大のポイントは、従来のLabVIEWがワークフローなどを先に固めてから計測の実施、という流れであったが、システムが複雑化する現在、テスト・計測エンジニアが求める目的を、より早く実現することを目的に、先に計測データを見て、それから必要であればプログラムを記述して、より詳細な処理を行う、といった手順に変更する、という決断を同社が行ったためだ。
そのため、LabVIEW NXGでは、簡単に言ってしまえば、PCの画面上に出てくるアイコンやプルダウンメニューなどから、必要な項目を選択するだけで所望する計測が自動的に実施され、データの収集が実施できるようになった。また、関数やフィルタもすでに用意されたものが複数種類あるため、それらを選択して実施して、その結果を見る、といったこともプログラム不要で行うことができるようになっている。必要に応じて解析を追加したり、条件の追加を行う、といった場合は、従来と同じようなグラフィカルプログラミングで、手順を記述して実行するだけで済ませることができる。
また、LabVIEWで作成されたプログラムについても、ファイルフォーマットが異なるため、コンバータを介せば、利用すればることが可能だという(逆にLabVIEW NXGで作成したプログラムをLabVIEWに変換するコンバータはないため、利用することはできないという)。
なお、LabVIEWとLabVIEW NXGはセットで提供されるとのことだが、LabVIEW NXGは現状、出始めのツール、ということで、対象がベンチトップでデータを収集する人などと限定的。リアルタイムでの計測なども将来のロードマップでは予定されており、数年以内をめどに、機能強化が実施される見通しだという。
広がる産業界での活用
NIのソリューションは、上述したように、基礎研究から最終製品の製造テストに至るまで、幅広い領域をサポートすることが可能であり、そうした点から、同社は現在、5Gや自動運転、IIoTといった領域に注力しているという。
例えば5Gは、Verizon 5G規格に準拠した28GHz帯のハイブリドビームフォーミング対応128アンテナ基地局構成での伝送実験に成功しているほか、AT&Tと協力して、ミリ波トランシーバとFPGAを駆使することで、従来比で6000倍高速にチャネルの評価を可能とした高度なミリ波帯チャネルサウンダの開発などを進めている。
また、自動運転に関しても、複数企業と団結して、NIのエコシステム上でHIL、計測技術、V2X系の通信技術などを組み合わせた自動運転/ADASソリューション開発や、日本でもマックシステムズ、アンリツ、インクリメントPと共同で、ドライビングシミュレータを核としたテストシステムの開発などが進められているという。
このほか、IIoT分野では、産業分野で標準イーサネットの利用に向け、「Time Sensitive Networking(TSN)」に採用されている最新規格「IEEE802.1AS」に準拠した時間同期手法を採用したマルチスロットEthernetシャーシ「CompactDAQプラットフォーム」を発表。同プラットフォームでは、イーサネットケーブルを接続するだけで、各機器同士の同期ができるため、配線コストの削減のほか、セットアップ時間の短縮などが図れるという。
なお、同社では、「ITの世界ではサーバをリモートで監視・コントロールすることは当たり前だが、計測装置では、そうした技術はまだまだ進んでいない。CompactDAQを活用することで、そうしたことが計測装置でも簡単にできるようになる」としており、現場のテスト環境での活用を目指して、国内でも積極的に展開していきたいとしている。