シーメンスPLMソフトウェアは7月5日、同社が2016年に買収を発表したCD-adapcoの製品を中心としたカンファレンスを開催。同カンファレンスにおいて、CD-adapco製品管理担当シニア・バイスプレジデントを務めるジャン・クロード エルコラネリ氏が、CD-adapco製品の現状などの説明を行った。

デジタライゼーション(デジタル化)により、社会にさまざまな変革がもたらされるようになってきた。これは、ビジネスの世界でも同様で、「デジタル・ツイン(Digital Twin)」といった言葉に代表されるようなデジタル(シミュレーション)の世界の情報と、現実(リアル)の世界を結びつけることで、新たな価値を提供するといった動きが見られるようになっている。「シーメンスは、そうした変化の動きをドライブする企業の1社であり、ものづくりの産業変化をリードしようとしている」と同氏は語る。

シーメンスPLMが提供する製造業向けソフトウェアスイート群

具体的には、3Dプリンタやマシンラーニング、アドバンスト・ロボティクスといった技術などの活用が製造現場で進むことが想定されるが、「そうした技術を活用していくための、さまざまな付加価値を一貫したソリューションとして提供できるのはシーメンスPLMのみであり、カスタマは、設計から製造までシームレスなデジタルによるバリューチェーンを活用することが可能となっている」とするほか、現在もソリューションの拡充を進めていることを強調。技術的に不足している部分を補う買収も積極的に進めており、2007年にはUGS(現在のシーメンスPLMソフトウェア)を買収して以降、2012年にLMS Internationalを、2016年にはPolarionとCD-adapco、そして2017年にはMentor Graphicsと次々と買収を完了させてきた。

シーメンスが過去に買収してきたソフトウェア関連の主な企業群

「システムは年々複雑化し、メカトロニクス、制御、エレクトロニクスの3者が複雑に連携したものへと変化してきている。また、それらを構築する材料も新たなものへの対応が求められるほか、地域的な要望などにも対応する必要が出てきている」と同氏は現在のものづくりが置かれている状況を説明するが、その一方で、「顧客の手元には、1Dシミュレーションや3Dシミュレーション、テストモデリング、CFDといった解析データが大量に存在している。しかし、それらはすべてシームレスにつながっているとは言えない」とも現状を分析。デジタルツインの名の下、すべてをシームレスにシーメンスPLMがつなげることで、新たなものづくりのあり方を実現できるとし、そのために同社では「System Driven Product Development」を提唱、システムのモックアップ制作と併せて、1Dシミュレーション、3Dシミュレーション、テスト、CFDを組み合わせることを可能とするソリューション「Simcenter」により、効率の良い製品開発が実現できるようになってきたとする。

シーメンスPLMが提唱するSystem Driven Product Development」のイメージ。アナログのモックアップとデジタルが連携することで、効率のよい製品開発が実現できるようになるとしている

シミュレーションのフェーズとしては、「Validate(検証)」、「Troubleshoot(トラブルシューティング)」、「Design(設計)」、「Automate(自動化)」、「Explore(探査)」という5つが考えられ、従来は、検証やトラブルシューティングで活用されてきた。しかし同氏は、「シミュレーションは元来、1つの入力に対して、1つの結果を出力するという使い方であった。しかし、実際の現場では、与えられた環境に対する最適解が欲しいという欲求があり、複合的な要素を含んだ得たい結果にどうたどり着けるか、が重要となる」としており、最適な解を見つける探査を目指してシミュレーション業界が進む必要性があるとする。ただし、「現在、そうしたところにたどりつけていないのは、そうしたツールがないから、ということ」ともしており、これを可能とするのが、汎用熱流体解析プログラム「STAR-CCM+」であり、最新版となるv12.02では、レイトレーシングの導入や設計探査の強化などが図られた。特に、設計探査製品「Design Manager」の活用により、別々の解析を1つの結果として活用することができるようになったとする。

シミュレーションニーズは従来、検証やトラブルシューティングで多かったが、その結果から最適解にたどり着くことが目的であり、要求されるのは、そうした探査側への対応という流れになっていくとのことで、「Design Manager」の活用が、その第一歩となるとする

一方のSimcenterも錬成解析などの強化が進められており、2018年にはVRへの対応も実施される予定。シミュレーションの結果をVRを通じてダイレクトに確認することができるようになるとのことで、複雑化するシステムに対し、よりエンジニアの理解を高めることが可能になるとしている。

産業界で活用が期待されるVR/AR/MR技術。シーメンスPLMでも対応を進めており、2018年には体制が整うとしている

なお、STAR-CCM+は、柔軟な活用を可能とするライセンスオプション「パワーライセンス」を用意。ジョブ実行数もしくはコア数に応じて消費されるパワートークンを購入することで、例えば100トークンを購入した場合、1ジョブで100コア、10ジョブで10コア、100ジョブを1コアで実行といった柔軟な利用ができる。プリペイドで購入しておく必要はあるが、利用期限は基本的にはない、とのことなので、解析のパフォーマンスが欲しいときだけトークンを追加で消費して、開発速度を加速する、といったことも可能だという。