福井県立恐竜博物館は、熊本県天草市天草町で大型獣脚類(肉食恐竜)の歯の化石が発見されたと発表した。
今回の発見は、天草市立御所浦白亜紀資料館と福井県立恐竜博物館との共同調査によるもの。発見された化石の標本の一般公開は、天草市立御所浦白亜紀資料館で7月15日~9月3日に行われる特別展「恐竜展 ―トリケラトプスの仲間とその進化―」で実物が展示され、福井県立恐竜博物館では7月15日~10月15日にエントランスホールにて複製が展示される予定となっている。
化石は、天草市天草町の海岸で2014年10月19日の共同調査の際に収集された転石から出たもので、天草市天草町に分布する白亜紀後期の姫浦層群・軍ヶ浦層(別名:宮野河内層/カンパニアン中期:約8000万年前)からの発見となった。化石は歯冠部分のみで、高さ(長さ)42mm、幅25mm、厚さ16mm、母岩に残された印象の痕跡から歯は高さ56mm以上もあったことが判明している。歯の前後の縁に獣脚類の特徴となる鋸歯があり、先端から基部へと向かう鋸歯列の方向などから、歯は左上顎ないし右下顎の歯と考えられるという。一般に、歯の化石のみで獣脚類の種類や大きさを特定することは困難だが、ふくらみのある楕円形の歯の水平断面はティラノサウルス科の特徴に類似し、全長7mを超える大型獣脚類のものと推定される。
なお、天草市天草町および河浦町にかけての軍ヶ浦層からは、1997年にも植物食の恐竜化石(竜脚類の歯と鳥脚類の足跡化石)、御所浦町からは国内最大級の肉食恐竜の歯(御所浦層群・烏帽子層:約1億年前)が発見されており、同市からはさらに多様な恐竜化石が得られる可能性があるという。また、熊本では今回より古い御所浦層群(約1億年前:天草市)そして御船層群(約9000万年前:御船町)の時代にも種類の異なる大型獣脚類の化石記録があり、新しい化石はこれらの時代を通じて熊本に多様な大型獣脚類が生息しつづけていたことを裏付ける資料となるということだ。