アクセンチュアは7月5日、AIが先進12カ国の経済に与えるインパクトについて分析したレポート「Why Artificial Intelligence is the Future of Growth」の結果を発表した。

先進12カ国は日本、米国、フィンランド、英国、スウェーデン、オランダ、ドイツ、オーストラリア、フランス、ベルギー、スペイン、イタリア。対象業界は情報通信、製造、金融サービス、卸売・小売、運輸・倉庫、専用サービス、ヘルスケア、建設、農林水産、宿泊・飲食、水道・電気・ガス、アート・エンターテインメント、福祉サービス、公共サービス、教育、その他サービスの16業界だ。

同調査によると、企業はAIを最大活用することで、2035年までに収益を平均で38%向上できる可能性があるという結果が導き出された。年間14兆ドルの粗付加価値(GVA)を新たに創出することができるという。調査対象となった16の業界において、AIの活用が進まないケースを「ベースラインシナリオ」、AIの影響力が市場に浸透した場合を「AIシナリオ」としてそれぞれの経済成長率を比較すると、AIシナリオでは、2035年時点の経済成長率を加重平均で1.7%向上させる可能性があることが明らかになった。

経済成長へのインパクト

2035年時点のAIシナリオにおいて特に高い成長率を見込んでいる業界は、情報通信(4.8%増加)と製造(4.4%)、金融サービス(4.3%)で、この3業界だけでも6兆ドルのGVAが新たに生まれるとされている。もともと生産性の伸びが緩やかな労働集約型の業界においてもGVAの大幅な増加が予測されており、教育業界では1090億ドル、社会福祉業界で2160億ドルの増加が見込まれている。

企業収益へのインパクト

同社はAIを活用したビジネス戦略を成功に導くためには、経営陣がAIのメリットをしっかりと理解してロードマップを描く必要があるとしている。そのうえで、アジャイル領域のスキル開発をはじめ、データのクラウド統合やオートメーションの高度化、AIを適正に評価する財務基準の作成などの改革が欠かせないという。

アクセンチュア・リサーチのマネジング・ディレクターであるマーク・パーディ氏は「企業がAIを活用して、インテリジェント・オートメーションによるプロセス最適化や、人間の労働力と物的資本の連携強化、新しいイノベーションの推進を行うことで、劇的かつ長期的な収益成長および経済成長がもたらされるだろう」と述べている。