早稲田大学は、ふたつの質感のものを細かく並べ、その両者の割合をマイクロマシンを用いて変えることにより、実物同様のさまざまな質感を表示させるという研究を発表した。

(a)のように黒と白を並置したものを遠くから見ると、グレーに見える。(a)と同じ原理で、(b)のように「つやつや」の面と「ざらざら」の面を並置すると、両者の中間の質感に見える(出所:早稲田大学ウィークリー)

同研究は、早稲田大学大学院基幹理工学研究科修士課程2年の岡田陽平氏によるもので、同研究成果は、「ロボティクス・メカトロニクス講演会2016」、「第21回バーチャルリアリティー学会」、「インタラクション2017」の3つの学会にて発表された。

「マイクロマシン」は、人間の髪の毛の太さくらいの数十nm(ナノメートル)~数百µm(マイクロメートル) サイズの小さな機械。携帯電話の中などには多くのマイクロマシンが使われており、現代の生活に欠かせない物となっている。岡田氏は、このマイクロマシンを使った「視覚的質感の可変提示」というテーマに取り組んでいるという。視覚的質感とは「つやつや」や「ざらざら」といった見た目の質感のことを指し、人間は、物体表面の質感を、触らなくても目で見ただけで「つやつや」や「ざらざら」といった視覚的質感として知覚することができる。

同研究では、さまざまな視覚的質感をディスプレー上に再現することを目標としている。岡田氏は、テレビや液晶ディスプレーが多くの色を表示することができるのは、赤・青・緑の3つの色の光を混ぜ合わせて表示しているからであり、同じことが質感でもできないか、と考えたという。「つやつや」と「ざらざら」のふたつの質感のものを細かく並べ、その両者の割合をマイクロアクチュエータ(小さな駆動装置)などを用いて変えることにより、実物同様のさまざまな質感を表示させることを目指しているということだ。これが実現すれば、通信販売において画面で見た商品と、実際に届いた商品の質感が違った、ということが防げるようになるかもしれない、と岡田氏は語っている。

なお、同研究の成果については特許の出願も行われており、今後は国際学会での発表・受賞を目指し、研究に取り組んでいくということだ。