東京工業大学(東工大)は6月28日、シリカにロジウムとアミンを同時に固定した触媒を開発し、オレフィンのヒドロシリル化反応における190万回の触媒回転数を達成したと発表した。

同成果は、東京工業大学物質理工学院 本倉健講師、同大学院生の前田恭吾氏らの研究グループによるもので、6月19日付けの米国科学誌「ACS Catalysis」オンライン版に掲載された。

有機ケイ素化合物から構成されるシリコーンは、ケイ素由来の無機化合物と有機化合物の両方の性質の良いところを持ち合わせた材料であり、撥水剤・塗料・建材・ゴムなどさまざまな用途で広く利用されている。シリコーンの合成法のひとつであるヒドロシリル化反応は、工業的にも貴金属触媒を用いて行われているため、触媒量の低減はシリコーンの持続的な供給に必須であるといえる。

同研究グループはこれまでに、固体表面に複数の活性点を集積することで、協奏的触媒作用が発現し、一方の活性点のみが存在する場合と比較して触媒反応が促進されることを見出してきた。今回の研究では、この「活性点集積型触媒」のコンセプトに基づき、ロジウム錯体と第3級アミンをシリカの表面に固定した触媒(SiO2/Rh-NEt2)を開発した。

同触媒は、オレフィンのヒドロシリル化反応に極めて高い活性を示す。触媒1分子が何回目的の反応を進行させたかを示し、活性の指標となる触媒回転数を計測したところ、24時間で最大190万回に達することがわかった。この値は、これまでに報告されている他の固定化ロジウム触媒と比較して、1桁高い値であるという。

オレフィンのヒドロシリル化反応では、原料となるオレフィンとヒドロシランの構造を変えることで、必要に応じた構造の有機ケイ素化合物を合成することができる。同触媒を用いてさまざまなオレフィンとヒドロシランの反応を行ったところ、いずれも高収率で対応する生成物が得られることがわかった。

さまざまな構造のオレフィンおよびヒドロシランを用いたときの生成物収率。括弧内は要した時間 (出所:東工大Webサイト)

今回開発した触媒について同研究グループは、貴金属使用量を大幅に減らした有機ケイ素化合物の合成が可能になると説明している。今後、固体表面での錯体構造に加えて、2つの活性点の配置をチューニングすることによっても、さらなる活性向上が見込まれるという。