大阪大学(阪大)は6月26日、温和な条件でアミドの還元反応を進行させる触媒の開発に成功したと発表した。
同成果は、大阪大学太陽エネルギー化学研究センター 金田清臣招へい教授(名誉教授)、同大学院基礎工学研究科 満留敬人准教授らの研究グループによるもので、6月25日付けの独化学会誌「Angewandte Chemie International Edition」オンライン版に掲載された。
アミドを還元して得られるアミンは、染料・溶媒・医薬品などさまざまな用途で必要不可欠な化合物である。これまでアミドの還元反応では、アミドが難還元性であるため、水素化アルミニウムリチウム(LiAlH4)などの強力な還元剤が使われていた。しかしながら、これらの試剤は反応後に金属廃棄物を大量に排出し、廃棄金属と生成物であるアミンとの分離が難しいといった難点がある。そのため、反応後に水のみを副生する水素ガスを使った触媒が古くから研究されてきたが、水素を用いたアミドの還元反応を進行させるには非常に高い水素圧と高温の反応条件が必要であった。
今回、同研究グループは、バナジウムと白金を複合化しナノ粒子化した触媒(Pt/V/HAP)を開発。30気圧以下、70℃以下でさまざまなアミドを高選択的にアミンへと還元することに成功した。また、同触媒を用いることで、常圧の水素でのアミドの還元反応を達成し、室温でも反応が進行することを明らかにした。同触媒は、反応液からのろ過により簡単に分離ができ、回収した触媒を再びアミドの還元反応に用いても触媒の活性低下は観られず、繰り返し使用することができるという。
同研究グループは今回の成果について、安全かつ省エネルギーでほしいものだけをつくり出す、環境に優しい触媒プロセスの開発が期待されると説明している。