東北大学は、高齢期に保持できている歯の本数が多い人は健康で長生きであることを明らかにしたと発表した。
同研究は、東北大学大学院歯学研究科の松山祐輔歯科医師によるもので、同研究成果は、6月13日米国科学誌「Journal of Dental Research」に掲載された。
歯が多いと、死亡率が低いことや要介護になりにくいことは先行研究で示されているが、要介護でいる期間との関連は明らかではなかったという。そこで同研究では、要介護になる前の歯の本数と、寿命・健康寿命(日常生活に制限のない期間)・要介護でいる期間の関連を明らかにすることを目的とした。
松山医師は、JAGES(Japan Gerontological Evaluation Study, 日本老年学的評価研究)の2010年調査に回答した、全国24自治体の要介護認定を受けていない65歳以上高齢者を3年間追跡したデータを分析。調査は自記式の質問紙で行われ、歯の本数は「0 本・1-9 本・10-19 本・20本以上」の4区分での回答を得た。自治体のデータベースから死亡日および要介護度2以上の認定日を取得し、調査データとリンクし分析した。死亡や要介護発生に影響を与えそうなその他の要因の影響を取り除くため、分析は性別で層別化し、統計モデルにより、年齢、入れ歯の使用、教育年数、所得、既往歴、主観的健康感、転倒経験、喫煙、飲酒、歩行時間、BMI、うつなどの影響を調整、それらの影響を排除した。
最終的に、調査に回答した 85,161名(回収率 67.4%)のうち、77,397名(男性36,074名、女性41,323名)について3年間追跡したデータの利用が可能であった。分析の結果、死亡や要介護発生に影響を与えそうなその他の要因の影響を取り除いた上でも、歯が多いと、単に寿命が長いだけではなく、健康寿命が長く、一方で、要介護でいる期間が短いということが明らかになった。その差は85歳以上でもっとも大きく、歯が20本以上ある人は、0本の人にくらべて健康寿命が男性で+92日、女性で+70日、寿命が男性で+57日、女性で+15日、要介護でいる期間が男性で-35日、女性で-55日の差があることがわかった。
同研究により、歯が多いと健康寿命・寿命がともに長く、要介護でいる期間が短いことが明らかになった。厚生労働省から出されている健康日本21(第2次)では、健康寿命の延伸と、寿命と健康寿命の差を小さくすることが目標として掲げられており、同研究から、歯の健康が、健康長寿に寄与する可能性が示されたということだ。