日立化成は6月26日、リチウムイオン電池の高い入出力特性を維持しつつ、従来の低結晶性炭素負極材よりも不可逆容量を小さくした低結晶性炭素負極材の関連技術に関する基本特許第5811999号について、特許庁の審理の結果、同社の特許維持が決定したことを発表した。

リチウムイオン電池は二次電池の一種で、リチウムイオンが正極と負極間を移動する反応によって充電・放電を行うもの。従来の鉛蓄電池等の二次電池と比べ、軽量で大容量の電気を蓄えられるという特性があり、EV、HEV、パソコン、スマートフォン等に用いられている。中でもEV、HEVの普及に伴い、車載用リチウムイオン電池の市場規模は今後拡大していくとみられる。

リチウムイオン電池の負極材としては、人造黒鉛、天然黒鉛等の結晶性炭素、低結晶性炭素、金属負極材等があり、低結晶性炭素負極材は高い入出力特性を有することから、HEVのリチウムイオン電池等に用いられている。しかし、低結晶性負極材は不可逆容量が大きく、結晶性炭素負極材等と比べ、初回に充電した容量よりも放電できる容量が小さいという課題があった。

そこで同社は、高い入出力特性を維持しつつ、不可逆容量が小さい低結晶負極材を開発、製品化し、2010年に特許を出願した。本特許は、核となる低結晶性炭素材料の周りを特定量の炭素層で被覆した負極材に関する基本特許だ。

本特許は負極材分野における注目度が高く、特許取得後の2016年5月に第三者からの特許異議の申立てが申請されたが、特許庁による審理の結果、日立化成による特許維持が決定した。

日立化成は関連特許として、特許第5439701号および第5707707号を保有しており、今後も強い特許網を構築し、負極材事業の優位性を高めていく考えだ。