富士フイルムは、キャンバスとペプチドを用いたがん免疫治療薬の共同研究契約を、6月26日に締結したことを発表した。

がんの治療法は、抗がん剤投与、外科手術、放射線照射が一般的だが、近年、第4の治療法として、生体の持つ免疫機能を高めてがん細胞を死滅させる「がん免疫療法」が注目されている。同治療法は、抗がん剤投与や放射線照射と比べて副作用が少なく、延命効果も期待できることから、がん免疫治療薬の研究開発が進んでいる。なかでも、抗体を用いたがん免疫治療薬の研究開発が活発化しており、既に上市されたものもあるものの、適応症の患者すべてには治療効果が期待できないという問題がある。

このたび締結した共同研究において、両社は、アミノ酸が2~50個程度繋がったタンパク質の断片である「ペプチド」を用いた中分子医薬品などの分野で、がん免疫治療薬の候補化合物の創出を目指す。

中分子医薬品とは、細胞膜透過性に優れる低分子医薬品の特長と副作用が少ない抗体医薬品の特長を併せ持つ医薬品で、有効成分が細胞内に入ることにより、細胞内でのたんぱく質間相互作用を阻害するアプローチなどが可能になり、従来の医薬品とは異なる新しい創薬標的が狙えるとされる。

なお、この共同研究では、富士フイルムが、写真フィルムの研究開発で培った高度な化合物の合成力や設計技術、抗がん剤の研究開発の知見やノウハウなどを活かし、ペプチドおよび低分子化合物の合成・設計を行う。一方、キャンバスは、ペプチドを用いた抗がん剤候補品の創薬研究で蓄積してきた経験に基づき、富士フイルムが合成・設計した候補化合物の薬効評価を実施するということだ。

今後、両社は、新規がん免疫治療薬の創出を通じて、がん患者に対する治療法の新たな選択肢を提供することを目指すとしている。