東京大学は、同大学総合文化研究科広域科学専攻の舘知宏助教とマサチューセッツ工科大学のエリック・ドメイン教授が、一枚の紙を折るだけで任意の多面体形状を得るアルゴリズムを開発したことを発表した。この成果は、7月4日~7日にオーストラリア・ブリスベンで開催される「33rd International Symposium on Computational Geometry (SoCG 2017)」で発表される。

アルゴリズムの全体像(出所:東大Webサイト)

一枚の紙を折ってさまざまな形状に加工する「折り紙」が、機能を持った立体構造やマイクロスケールの形状の作成方法として着目されている。

舘助教が10年前に公開したフリーソフトウェア「オリガマイザ(Origamizer)」は、一枚の紙から切り込み無しで複雑な多面体形状を隙間なく折るための展開図を生成できるが、形状によっては生成に失敗することもあり、実現可能な形状の理論的限界はわかっていなかった。

一方、折り紙が任意の多面体形状を実現できることは、ドメイン教授らによって1999年に証明されていたが、この手法では折った形状に無数の隙間が生じ、「水密性」が保持されず、実用性に課題があった。

左:「隙間のある」折り状態、右:「水密な」折り状態(出所:東大Webサイト)

今回、両氏は「ありとあらゆる多面体」について、折り目を最小限に抑えて「水密に」折り出すことができるアルゴリズムを開発した。

この成果は、立体形状実現の方法としての折り紙にほぼ限界がないことを示したもの。平面材料に折り線パターンを施し、その折り線パターンに沿った折り変形を発生させる「自己折り」手法への応用によって、ありとあらゆる三次元形状が平面から自動的に折り出せる革新的技術への展望があると説明している。

なお、舘助教らは、今回の新しいアルゴリズムをソフトウェア「オリガマイザ」の新バージョンで実装する作業を行っているということだ。