長崎大学は、同大学 水産・環境科学総合研究科の河端雄毅准教授、同研究科博士課程五年一貫制の長谷川隆真氏、博士前期課程の高月直樹氏らと、海洋未来イノベーション機構と水産学部附属練習船の研究者らと共同研究グループが、流れ藻にインターバルカメラ(映像・静止画)とGPS衛星送信機を備えた観測システムを開発し、ブリ属稚魚の行動を連続的に記録して、ブリ属稚魚が流れ藻に集まる理由を解明したことを発表した。この研究の成果は6月21日、海洋生態学の専門誌「Marine Ecology Progress Series」に公開された。
海底からちぎれて海を漂う海藻「流れ藻」には、ブリ・カンパチなどのブリ属稚魚が集まる。しかし、なぜ集まるのかは定かでなかった。そこで研究グループは、流れ藻にインターバルカメラ(映像・静止画)とGPS衛星送信機を備えた観測システムを開発し、ブリ属稚魚の行動を連続的に記録した。
ブリ属稚魚は、昼間には流れ藻周囲を遊泳したが、視覚が効かない夜間には流れ藻直下で体を密着し合っていた。このことから、目印の無い海洋で群れを維持するために流れ藻を利用していると考えられる。また、群れが小さいと昼間にも流れ藻付近に留まり、天敵となる捕食魚が現れると藻の中に隠れた。
一方で、群れが大きい時は流れ藻の周囲を泳ぎまわり、天敵が現れても藻に隠れることはなく、群れで遊泳して捕食者を回避した。このことから、群れが小さい間は「隠れ家」として流れ藻を利用し、仲間が集まり群れが大きくなると、周囲を泳ぎ回るようになると考えられる。
ブリ属養殖はほとんどの場合、人工孵化稚魚ではなく流れ藻に集まった天然稚魚を捕獲して生簀で成長させている。近年ブリ属稚魚の資源量は安定しているものの、沿岸開発や温暖化等によって流れ藻となる海藻の量が減少することが懸念されている。今回の研究成果は、隠れ家・群れ形成の場となる浮き漁礁を設置するなどの漁業振興策の決定に寄与し、ブリ属稚魚の安定供給・持続的利用に繋がると期待されると説明している。